あなたへ
天ぷらに、天つゆではなく、塩を好むようになったのも、
紅茶よりも、コーヒーを好むようになったのも、
あなたと結婚してから変わった私の好みでした。
結婚する前の私と、
結婚してからの私の味の好みが変わったように、
思えば、あの夏からの私の好みもまた、更に変化をしてきました。
あの夏にいた私は、目玉焼きにはお醤油が好きだったけれど、
今の私は、塩が好み。
因みに、今のあの子は、ブラックペッパーが好みです。
特に好まなかったお味噌汁が好きになったと、こんな手紙を書いたのは、
あなたよりも、ひとつ年上になった私でした。
シナモンは好まなかった私だけれど、
美味しいと感じるシナモンもあることを知り、
時々には、シナモンを好んで食べるようになったのは、
あなたを見送ってから、どれくらいが経った頃からだっただろう。
柚子は相変わらず苦手ですが、
いつか、好んで食べる味へと変わる日が来るのかも知れませんね。
味の好み。
こんな視点から、これまでのことを振り返ってみると、
もしも、此処にあなたがいてくれたのなら、
あなたの味への好みもまた、
きっと変化を見せてくれていたのでしょう。
今日は、コーヒーじゃなくて、お茶がいいな。
こんなあなたの声が聞こえる日が来たのかも知れません。
揚げ物よりも、煮物を好むようになって、
あの頃のあなたが嫌がっていた玄米を好む日も、
来たのかも知れませんね。
それなら、此処にいるあなたは、
目玉焼きに、何をかけるのが好みだったのだろう。
当たり前のように、目玉焼きに塩を振りながら、
3人とも、
目玉焼きにはお醤油が当たり前だったあの頃のことを、
思い出していました。
もしも此処に、家族3人での、あの夏の続きがあったとしたのなら、
今頃の私たちは、
それぞれに違う味の目玉焼きを好むようになっていたのかなって。