拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたブランド

あなたへ

 

あの夏から、1つ年を重ねたあなたは、

どんなあなただったのだろう。

 

あの夏から、2つの、3つの、4つの年を重ねたあなたは、

どんなあなただったのだろう。

 

そして、今、此処にいるはずだった、

あの夏から8つの年を重ねたあなたは、どんなあなただったのだろう。

 

あなたを見送ってからの私は、何度こんなふうに、

側にいる筈だったあなたの姿を思い浮かべたでしょうか。

 

もしも、あの夏の続きを、

あなたと一緒に生きることが出来たのなら、

今の私の側には、どんなあなたがいてくれたのかなって。

 

年を重ねれば、誰も同じなのだと思っていたのは、

若かった頃の私でした。

若い頃はどんなに格好良くたって、年を取れば、

皆、対して変わらないおじさんになるのよって。

 

でも、それは違ったのかも知れません。

 

例えば、その昔、アイドルのように持て囃された男性が、

やがて年を重ねて、

一般的に、おじさんと呼ばれる年代へと突入した頃になると、

若い頃には出すことの出来なかった特別な魅力を兼ね備えて、

更にその魅力が高まっていたりもします。

 

そのような素敵な年の重ね方をする方は、

おじさんとか、おじさんではないとか、

そんなレベルにはいないようにも、私には感じるのです。

 

年齢と共に、磨き上げられた魅力を持つそのような方は、

確固たる独自のブランドを兼ね備えた存在へと変わっていくように思えるのです。

 

きっとね、

この世界で8つの年を重ねたあなたなら、そんな彼らと同じように、

あの夏よりも、更に輝きを増して、

此処に、あなたブランドが立ち上がっていたのだと思います。

 

今日の私は、あなたの遺影をじっと見つめて、

そこから更に年を重ねたあなたの姿を、思い描いていました。

 

きっと、あの子に負けずに体を鍛えたはずのあなたなら、

あの夏よりも、更に鍛え上げられた姿が此処にあったのでしょう。

 

いつまでも、私の素敵な夫であると同時に、

いつまでも、あの子のヒーローであり続けるあなたは、

きっと此処に、磨き上げられた魅力を放っていたのでしょう。

 

そうして私は、

今、此処でしか見ることの出来ないあなたに、

こっそりと惚れ直す瞬間を、幾つも見つけていたのよ。

 

あの夏から8つの年を重ねたあなたにも、会ってみたかったな。

 

此処にあなたがいたのなら、

今日のあなたは、どんなふうに笑ったのでしょうか。

 

目を閉じて、此処にいるはずだったあなたの姿を思い浮かべてみれば、

これまでは、上手く思い描けなかったはずの、

あの夏から更に年を重ねたあなたの姿が、何故だかはっきりと浮かんだ気がしました。

 

瞼の向こう側、

私に笑顔を向けてくれたその姿は、

あなたが将来なりたかった、

あの夏から8つの年を重ねたあなたの姿だったのでしょうか。

 

髪を長めに伸ばして、あの夏まではなかった髭を蓄えて。

穏やかに笑うあなたの姿は、とても素敵でしたよ。

 

なんだか、ちょっとだけ照れてしまいますが、

今夜の私は、瞼の向こう側にいるあなたに、

惚れ直してしまったようです。