あなたへ
この子はどんな道を歩むのかな。
この子はどんな大人になるのだろう。
小さなあの子を抱きながら、
私たちが初めてこんな話をしたのは、
いつのことだったでしょうか。
ねぇ、あなた。
あの頃の私たちには、全く想像もつきませんでしたね。
ただ小さな温もりをくれるあの子が、どんなふうに成長して、
どんなふうに、将来の夢を見つけていくのかだなんてさ。
あの頃の私たちにとって、それらは全て、
ずっと、ずっと先のことなのだと思っていましたね。
この子も、いつかは巣立って行くんだねってさ。
ねぇ、あなた
ねぇ、あなた
えっと・・・さ・・・
あぁ、なんだか、今日の私は駄目です。
胸の中に、たくさんの感情が溢れるばかりで、
今日の私には、それらをあなたに上手く伝える言葉が見つかりません。
あの子は明日、此処から巣立ちます。
本当は、寂しいけれど、
本当は、もう少しだけ、
あの子と一緒に、此処で過ごしていたいと思ってしまうけれど、
でも、
あんなに小さかったあの子が、こんなに立派に成長してくれたことも、
しっかりとした足取りで、前へと歩める子に育ってくれたことも、
全部が、とても嬉しい。
そっと、目を閉じてみれば、
あの子と、たくさん笑った記憶ばかりが蘇ります。
あの子と過ごしたこの21年間は、全部が本当に楽しかった。
だからね、明日は、
最高の笑顔で、あの子を見送ってくるからね。