拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子の巣立ちの日

あなたへ

 

昨日、あの子が無事に、此処から巣立って行きましたよ。

 

出発前、あなたに長い間、手を合わせたあの子は、

あなたにどんな話をしていたのでしょうか。

 

静かに手を合わせたあの子に、

あなたはどんな言葉を掛けましたか。

 

数件の用事を済ませてから、

あの子を駅まで送る段取りになっていた昨日は、

あの子と一緒に出掛けることから始まりました。

 

巣立つ間際まで、バタバタとしてしまうところは、

なんだかとても、私たちらしくて、笑ってしまいますが、

出発の時間までを家の中で過ごすよりも、

2人で出掛けていた方が、

より楽しい時間を過ごせているようにも感じていました。

 

車内では、いつもと変わらない談笑を。

 

今日で巣立ってしまう実感が湧かないよねって、

こんなふうに笑い合いながら、

私たちは、いつも通りの時間を過ごしました。

 

今まで育ててくれて、ありがとう

 

突然に、あの子から大きな花束を差し出されたのは、

あの子だけが車を降りて、用事を済ませる予定になっていた、

最後に立ち寄った場所でのことでした。

 

のんびりと車内であの子を待っていた私の腕の中が突然に、

綺麗な花で、いっぱいになったのです。

 

昨日の私は、

あの子の巣立ちまでを、笑顔で過ごそうと決めていたのに、

前日の夜には、鏡の前で、笑顔の練習までしたというのに、

そんなことをされたら、泣いてしまうではありませんか。

 

大きな花束を抱えて、

盛大に涙を流す私にあの子が見せてくれたのは、

私の大好きな笑顔でした。

 

もう十分に、十分過ぎるほどに、

あの子は私に素敵な時間をくれたのに、

巣立ちの瞬間までを、

とても素敵な時間で埋め尽くしてくれました。

 

いってらっしゃい

 

行ってきます

 

駅のホームで、笑顔で交わしたのは、

いつも通りの我が家の挨拶、ハイタッチ。

勿論、あなたの分と2人分です。

 

挨拶を交わすと間も無くに、あの子が乗る電車が到着し、

あの子が乗り込むと、すぐにドアは閉まりました。

 

笑顔で手を振る私に、あの子が見せてくれたのは、

笑顔で手を振り返してくれる姿。

 

あの子は、最高の笑顔で、此処から巣立って行きました。

 

あの子からの突然のサプライズでは、盛大に泣いてしまったけれど、

駅のホームでは、

あの子が乗った電車が見えなくなるまで、

笑顔のまま、あの子の巣立ちを無事に見届けることが出来ましたよ。

 

自分の足で、

しっかりと前へと歩めるようになったあの子の瞳に映る景色が、

ずっとずっと、鮮やかであり続けますようにと、そっと願いながら。

 

この世界には、あの子の知らない素敵なものが、

まだまだ、たくさんあります。

 

これからは、

これまでのあの子が知らなかった素敵なものを、

たくさん見つけてくれると良いですね。

 

 

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