拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

いつか見てみたい景色

あなたへ

 

あの子の巣立ちの日まで、

後回しに出来ることは、全て後回しにしてきた私ですが、

漸く少しずつ、

自分のやらなければならなかったことに着手し始めました。

 

先日の私は、用事を済ませるために、

普段の私があまり行かない場所へと行ってきました。

 

あの辺りを通るのは、いつ振りだっただろう。

 

以前に通った時には、

何も植えられてはいなかったはずのその場所で私が見つけたのは、

きっと、植えられてからそう長くは経っていないのであろう、

まだ若い桜の木々たちでした。

 

満開の時期を過ぎたこの時期に見えるのは、

ヒラヒラと舞う、ピンク色の景色。

 

風に乗って散りゆく花びらを眺めた私に、

道沿いに沿って植えられた若い木々たちが想像させたのは、

ずっとずっと先の未来でした。

 

いつかは、この通りも立派な桜並木へと変わって行くんだろうな。

 

その頃のあの子は、幾つになるのだろう。

 

私は、あなたよりも幾つ年上になっているのかな。

 

もし出来れば、あの桜の木々たちが立派に育った春の始まりに、

一度くらい、あの子と一緒に、この場所へ来ることが出来たらいいなって。

 

その頃のあの子はきっと、

おじいちゃんにも近い年齢を迎えたあの子。

 

おじいちゃんへと近付いたあの子と、

すっかりおばあちゃんになった私は、

桜の景色を眺めながら、どんな話をするのでしょうか。

 

その頃の私はきっと、

この胸の中には、あと幾つくらい、

大切な宝物を集めることが出来るのかなって、

そんなふうに、

そこに流れた時間全てを大切に、拾い集めるのでしょう。

 

今はまだ、全く想像もつかないずっとずっと先の未来ですが、

きっとね、

もしも、私が夢見た未来がやって来るのだとしたのなら、

その頃の私にとってのあの子も、

今がいちばん可愛いと、そう感じながら、

あの子と一緒に笑い合うのでしょう。

 

新しく見つけた桜の景色は、

遥か遠くにある未来を想像させながら、

私にひとつ、いつか叶えたい夢を持たせてくれました。

 

いつかこの場所で、

あの子と一緒に、同じ春を見てみたいなって。

 

ねぇ、あなた。

その時の私は、あなたにどんな手紙を書くのでしょうか。