拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

我が子が巣立った後の親の仕事

あなたへ

 

あの子が巣立ち、少しずつ、私が着手し始めたのは、

あの子の部屋の片付けです。

 

なんて言ったら、あなたはどんな顔をするのだろう。

 

え?あの子は自分で片付けて巣立ったんじゃないの?って、

驚いた顔をするのでしょうか。

それとも、笑うのかな。

 

専門性が高く、

私にはよく分からないものから順番に片付けをしてくれたあの子は、

それらの類全てを処分してくれました。

 

今のあの子の部屋に残されているのは、

大きかったり、解体が必要であったりと、

面倒な工程を含むものもありますが、少しずつ時間を掛ければ、

私にでも処分の出来るものばかりです。

 

此処へ越して来る時に、

一度は随分と自分のものを処分したあの子でしたが、

趣味が多ければ多いほど、

始めたことが多ければ多いほど、

そして、

思い出を大切にすればするほどに、

押し入れの中に詰め込まれるものも増えていくとも言えるのでしょう。

 

子供部屋の押し入れの中。

それは、かつては小さな子供だった人の成長過程が詰まった場所。

 

巣立ちの時がやってきたからこそ、改めて、

自らがそこに詰まった自身の成長過程を振り返り、

そこにあるものが、かつては大切だったものであることに、

漸く気が付くことが出来るのかも知れません。

そして、

きっともう、この部屋で暮らす日はやって来ないのだろうと、

こんな視点で未来を見据えて初めて、

手放せるものも、きっとあるのでしょう。

 

これとこれは、取って置いてね

ここにあるものと、ここのものは全部、捨てちゃっていいよ

 

あとはやっておくよと、片付けを引き継いで、

不要なものと、必要なものを確認したのは、

思っていたよりも、残された時間が少なく、全てのものを片付けるには、

もう少し多くの時間が必要だったと、2人で悟った日のことでした。

 


あの子が巣立ち、私ひとりで、あの子の部屋の掃除を始めてみれば、

改めて、他の部屋を見直す機会へと繋がり、

他の部屋においても、まだまだ不要となったものが隠れていたことに気が付いて、

なんだかとても、大変なことになってしまいました。

 

あの子が巣立った後には、

きっと十分過ぎるほどに、自分のやりたいことへと向き合う時間があるのだと、

そんな未来を思い描いていた私ですが、

まだまだ掃除に時間が掛かってしまいそうです。

 

なんだか笑ってしまいますが、

この機会に、家中を一掃するのも、悪くはないのでしょう。

 

やりたいことに着手できる日は、いつになることやらと、

小さなため息と同時に漏れてしまうのは笑み。

 

あの子の部屋を片付ける私の中に蘇るのは、

この部屋で、あの子と過ごした時間です。

 

片付けを手伝うよって、

ゴミ袋を持ってあの子の部屋へ入ったはずなのに、

あの子と私が一部屋へと集まれば、捗ってしまうのは、いつでもお喋り。

 

あまり時間がないというにも関わらず、

私たちは、相変わらずにお喋りが尽きなかったなって。

 

私の中に蓄積された、あの子との愛おしい時間が蘇り、

自然と笑みが溢れてしまうのです。

 

あの子と過ごした時間は、本当に楽しかったなって。

 

私の周りを見渡してみれば、

新しい一歩を踏み出した我が子の部屋の後片付けに向き合っていたのは、

どうやら私だけではないようですよ。

 

片付けが、もの凄く大変だったのよって、

こんな声が聞こえてきたのは先日のこと。

 

その方は、ご夫婦で既に片付けを終えたようですが、

大変だったと言いながらも、

なんだかとても楽しそうな笑顔が印象的でした。

 

元気いっぱいに巣立って行った我が子が残したものの後片付けの中にも、

愛おしさを感じさせてくれるのが、

我が子の持つ力であるのかも知れません。

 

ねぇ、あなた。

あの頃の私たちには、想像も出来ませんでしたね。

 

立つ鳥、跡を濁さずなんて言うけれど、

どうやら、我が子が巣立つ時というのは、

立つ鳥、跡を濁しまくりで巣立つものらしいです。

 

なんだか、笑ってしまいますが、

巣立った後のあの子の部屋の掃除をすることが出来るのも、

この人生の中で、たった一度だけ経験出来るほんの僅かな時間です。

 

今、此処に見えるこの景色も、

あなたの分まで大切に集めながら、歩んで行くよ。

 

 

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