拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

香りと記憶

あなたへ

 

例えば、春の匂いや夏の匂い。

朝の匂いや夜の匂い。

 

そこに感じたものと記憶が結び付き、

あなたと過ごした様々な時間が、私の中に鮮明に蘇るように、

お線香の香りがそちら側へと届いた時、

あなたの中に眠っていた記憶もまた、

鮮明に蘇っているのかも知れないなって、

ふわりと柔らかな薔薇の香りに包まれながら、

今日の私は、ふと、こんなことを考えました。

 

こちら側でお線香を立てた時、

あなたの胸の中には、

その香りに関連された記憶が蘇っているのかも知れない。

 

そちら側のあなたにとって、お線香が消えるまでの時間は、

それらを改めて愛しんで、

ひとつひとつを手に取るように眺めるような時間でもあるのかも知れないなって。

 

これまでの私たちは、

様々な香りのお線香を一緒に楽しんできましたね。

それらの香りに包まれながら、あなたは何を思っていたのでしょうか。

 

ストロベリーの香りは、

苺が乗ったバースデーケーキの味を思い出していたのかも知れません。

 

ミルクの香りは、

小さなあの子をその腕に抱いていた感触を思い出していたでしょうか。

 

キャンディの香りは、

缶に入ったキャンディを、

家族3人で食べたあの日のことが蘇ったのかも知れません。

 

スイカの香りは、

あなたの実家で、皆でスイカ割りをしたあの日の笑い声が聞こえたでしょうか。

 

チョコレートの香りはきっと、

小さなあの子が眠った後で、2人でチョコレートを食べた夜の記憶。

 

金木犀の香りに蘇ったのは、

庭に、金木犀の木が欲しいなって、こんな私の声だったのでしょうか。

 

桜の香りは、

入園式や入学式の日に見せてくれたあの子の笑顔。

そして、大きくなったなって、あの子の成長を喜びながら感じていた、

あの子への愛おしい気持ちが鮮明に蘇っていたのかも知れません。

 

そちら側と、こちら側。

私たちは離れ離れになってしまったけれど、

もしかしたら、

同じ香りの中で、同じ記憶を辿っていた日も、

あったのかも知れませんね。

 

今、あなたを包み込む薔薇の香りには、

どんな記憶が蘇りましたか。

 

この世界であなたが集めた愛おしい一瞬一瞬が、

あなたの胸の中いっぱいに満たされていたらいいな。

 

鮮やかな記憶と共に、

あなたが何処かで笑っていてくれますようにと願いながら、

もう一度、目を閉じて、薔薇の香りを感じてみれば、

私の中に蘇ったのは、

いつかのあなたが一度だけ連れて行ってくれた公園の景色でした。

 

 

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