あなたへ
ねぇ、あなた。
どうして人って体がひとつしかないのだろう。
もしも、ひとりにつき、ふたつの体があったらね、
やりたいことももっと出来るし、より多くのことを学べると思うの。
もしも私がこんなことを言ったとしたのなら、
あなたはどんな顔で笑うのだろう。
もっと早く前へと歩みたい。
もっと早く次の景色に辿り着きたいと、半ば強引に、
かなり前のめりに歩もうとしていたのは、先日までの私です。
あなたを見送ってからの私は、
自分のペースで、ゆっくりと歩みを進めて来ましたが、不意に思ったのです。
もっと早く歩んでみたいと。
私には、この人生の中で見てみたい景色があります。
やりたいこと、学びたいこともたくさんあって、
そして、どうしても見つけたい答えも、たくさんあるのです。
それなのに、日々の生活の中には、
やらなけばらならないことが、必ず組み込まれていて、
自分のためだけに使える時間って、
実はそんなに多くはないのだと思いました。
自分の体がひとつしかないことに、もどかしささえもを感じながら、
それでもなんとか大股で歩む努力をするしかないのだと、
躍起になって自分自身との戦いに奮闘していた私を突然に襲って来たのは、
体調不良でした。
もう!なんで今なのよ!って、焦る気持ちもあったけれど、
一旦歩みを止めて、出来るだけ、ゆっくりと休んで。
そうしてやがて回復すると、その時を待っていたかのように、
私の日々の生活が、急に忙しくなって行きました。
やらなければならないことを日々こなしながらも、
やはり、体がふたつあれば良いのにとも思ってしまいますが、
きっと人生というのは、丁度良く出来ていて、
急ぎ足で歩もうとすれば、
ゆっくりと休まなければならない物事が、
起こったりもするものなのかも知れません。
体調不良でゆっくりと過ごした日々と、急に忙しくなった日々。
足して2で割ったら、
私にとってのいつものペースであることに気が付いて。
これが今の私にとっての丁度良い速度であるのかも知れないとも、
感じることが出来ました。
人にはきっと、それぞれに合ったペースというものがあって、
そのペースで歩むからこそ、
自分にとっての必要な色を揃えることが出来るものなのかも知れませんね。
此処から先へと歩みを進めて行けば、きっとまたいつの日か、
体がふたつあればと、
もどかしさを感じることもあるのかも知れないけれど、
そんな時は、一旦立ち止まって、深呼吸でもして。
ひとつしかない体を大切にしながら、
自分にとっての丁度良いペースで、歩んで行こうと思います。