拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたが知らない私

あなたへ

 

そっか

あなたは、今の私の髪の手触りを知らないんだね

 

ふと、こんなことを考えていたのは、

新しく買い足したオイルの封を開けた瞬間のことでした。

 

これでもう、何本目になるだろう。

ここ数年の私が、髪のお手入れに愛用しているのは、

あんずの種から作られたオイルです。

 

これまでには様々なヘアケア商品を使って来た私ですが、

その中で最も気に入ったのが、このオイルなのです。

 

昨日より今日、今日より明日、と、

使えば使うほどに髪がスベスベになって行くような気がするのは、

オイルの持つ力であることは勿論のこと、

我が家で活躍中のマイナスイオンが発せられるドライヤーとヘアアイロンが、

オイルの持つ力を最大限に引き出してくれているからなのかも知れません。

 

夜の髪のお手入れを終えた後、

自分の髪の手触りを楽しむのが、ここ数年の私の、

密かな楽しみのうちのひとつとなりました。

 

ねぇ、あなた

髪がスベスベ

触ってみて?

 

もしもあの夏の運命が違っていたのなら、

今夜の私のこんな声に、

きっとあなたは面倒臭そうに私の髪を撫でて、

うん、そうだねって、

上の空で、あの頃みたいな返事をくれたのでしょう。

 

いつでもテレビに夢中なあなたはきっと、相変わらずに、

コマーシャルの間しか、私の相手をしてくれないのだろうけれど、

私はそんなあなたの側で、剥れた顔をしながらも、

あなたとのやり取りに満足をするのよ。

 

だって、あの頃の私は、

あなたのそういうところに時々文句を言いながらも、

あなたとのこんな毎度のやり取りが、本当はとても楽しかったもの。

 

あなたが知らない私をまたひとつ発見してしまった私は、

急に寂しさを感じた筈なのに、

思わず小さく呟いた先に、期待通りのあなたがいてくれたから、

なんだか笑ってしまいました。

 

あの夏にあなたを置いて歩み続けてきた私は、

こうして幾つくらい、あなたが知らない私を見つけて来たでしょうか。

 

何気ない日常の中を歩みながら、

時に、あの夏から随分と変わった自分を見つけるけれど、

ふと目に浮かんだあなたは、あの頃と変わらないやり方で、私を笑わせてくれるから、

私はいつの間にか、笑顔になっていて。

 

あの夏から、何度こうして、

あの頃のあなたに笑顔にさせてもらって来たただろう。

 

あなたがあなただから、

私は安心して、また前へと歩んで行けるよ。

 

 

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