拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

浴衣姿

あなたへ

 

先日のこちらでは、花火大会がありました。

この地域での花火大会の日になると、思い出すのは、

最後に家族3人で花火大会へ出掛けたあの日のことです。

 

花火の音が聞こえるとね、

あの日見た景色と、あの日の私が夢見た未来が私の中で鮮明に蘇るのです。

 

今年もまた、私の中へと蘇った記憶を辿りながら、

家族3人で花火を見上げながら密かに思い描いた未来を、

大切に振り返りました。

 

ねぇ、あなた。

私ね、自分の浴衣の着付けは出来ないけれど、

男性用の浴衣の着付けなら、出来るようになったのよ。

 

あの子に浴衣を着せてあげたのは、いつの頃のことだっただろう。

今の私なら、あなたに浴衣を着せてあげることが出来るのよ。

 

家族3人で花火大会へと出掛けたあの年の私は、

あなたの浴衣姿を上手く思い描くことが出来なかったけれど、

今の私が、はっきりと、あなたの浴衣姿を思い描くことが出来るのは、

あの頃の私には出来なかったことが、

出来るようになったからなのかも知れません。

 

きっとあなたは、

俺は浴衣じゃなくてもいいかな

なんて言うけれど、

今の私なら、着せてあげるからあなたも一緒に着ようよって、

自信を持って言える私になったもの。

 

もしもね、私があなたに浴衣を着せてあげられる日がやって来ていたのなら、

あなたはいつの日か、

女性用の浴衣の着付けを覚えてくれたのかも知れませんね。

 

とても器用で、なんでも熟すことが出来たあなたなら、

きっと直ぐに覚えることが出来たのでしょう。

 

髪を触ることも好きだったあなたなら、

浴衣によく似合うヘアスタイルも研究してくれたのかも知れませんね。

 

もしもあの夏の運命が違っていたのなら、

今年の私たちは、何度目の2人きりの花火大会を迎えたのでしょうか。

 

きっとね、いつの頃からか、花火大会の日は、

着付けの時間からが私たちのイベントの始まりで、

今年はこんな帯の結び方にしようか、

とか、

今年はこんな髪型にしてみようかって、

お互いの浴衣姿のアレンジからを楽しんでいたのでしょう。

 

あなたと一緒に浴衣を着て歩くことが出来たのなら、

きっといつもの景色も、違った景色に変わって見えたんだろうな。

 

2人で下駄の音を鳴らしながら見る景色は、どんな色をしていたのだろう。

 

どんなに望んでも、

見ることの出来ない景色であることは分かっていても、

何度でも、思い描いてしまうんだ。

もしもあの夏の運命が違っていたらってさ。

 

浴衣を着て、繋いだあなたのその手の温もりを何処かに探しながら。

 

 

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