拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

お盆の思い出 -2024-

あなたへ

 

もう、そちら側へは着いたでしょうか。

 

今年もまた相変わらずに、バタバタとした我が家のお盆でしたが、

ゆっくりと寛いでくれたでしょうか。

 

ねぇ、あなた

前髪切って?

 

唐突に前髪を切ろうと思い立ったのは、お盆初日の夜のことでしたが、

きっとあなたはすぐ側で、私のお願いを聞いてくれていたんだね。

だって、切り立ての前髪を見て、驚いてしまったもの。

 

いつの頃からか、

あなたみたいに上手に前髪を切ることが出来るようになった私だけれど、

お盆初日の切り立ての前髪は、

あなたみたいに上手に切れるようになった私のそれとはまた違っていたの。

それは、きっと私にしか分からない微妙な違い。

けれど、私にだけは直ぐに分かる微妙な違いでした。

 

私が鋏を持つことには変わりはない筈だったのに、

鏡に映る自分の姿を見つめてみれば、

あなたが切ってくれたと分かる前髪に整った私が映っていて。

なんだかとても不思議だったけれど、

お盆らしい出来事であるとも言えるのでしょう。

だって、お盆に帰ってきたあなたは毎年必ず、

不思議な思い出を残してくれるもの。

 

切り立ての前髪をとても気に入った私は、長い間鏡を見つめながら、

当たり前だったあの頃の私たちの日常を思い出していました。

 

ねぇ、あなた

前髪切って?

 

日常に溶け込んでいたこんな私のお願いを、

あなたはただの一度も断ることはしませんでしたね。

 

本当なら、疲れている日も、気分が乗らない日もあった筈なのに、

あなたはいつでも私のお願いを聞いてくれて。

私は、あなたのそんなところを尊敬しながらも、

随分と甘えさせても貰っていました。

 

あなたは何処にいても、私がよく知っているあなたのままなのだと、

あの夏からの私は、幾つものあなたらしい微かな痕跡を見つけて来ましたが、

こんなところにもまたひとつ、

私がよく知るあなたの姿が見えたような気がしました。

 

きっとあなたが切ってくれた前髪で過ごした今年のお盆は、

なんだかいつもの景色までもが違った景色に見えました。

 

きっとあの頃みたいに私のお願いを聞いてくれたあなた。

前髪を切ってくれて、ありがとう。

 

おかえりなさい、あなた

今日の日を楽しみにしていたよ

コーヒー淹れるね

 

ねぇ、あなた

今日は何が食べたい?

 

おやすみ、あなた

今夜はゆっくり休んでね

 

おはよう、あなた

コーヒー飲む?

 

ねぇ、あなた

一緒に出掛けようよ

 

あなた、おやすみ

今日も楽しかったね

また明日ね

 

ねぇ、あなた

お盆は、なんだかあの頃の時間とよく似ているね

家族3人でいることが当たり前だったあの頃の時間が、

ここに戻ってきたみたいだね

 

ねぇ、あなた

とても楽しいね

 

あなたを見送り、お盆という期間が特別なものへと変わった私にとって、

最も楽しみな期間だからこそ、

1年の中で、最も早くに過ぎ去ってしまうようにも感じています。

 

今年のあなたは、私たちのすぐ側で、

どんなふうに笑っていたのだろう。

 

今年のあなたは、

どんな顔であの子の笑顔を見つめていたのだろう。

 

もう、その声を聞くことが出来なければ、

その笑顔を見ることも出来ないけれど、

きっと今年も、家族3人揃って笑っていたあの頃と同じ笑顔が、

私たちのすぐ側にあったと信じているよ。

 

ねぇ、あなた。

今年のお盆も、とても楽しかったですね。

 

あなたは毎年、私の目が覚める前に帰ってしまうから、

昨夜のうちに、あなたへのお供物をあなた専用のバッグへと纏めておきましたが、

今年もちゃんと持ち帰ってくれたでしょうか。

 

今年も素敵な時間をありがとう。

また来年ね。

楽しみにしているよ。

 

 

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