拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

大人になったあの子から見たあなた

あなたへ

 

そっか

お父さんは、そういう人だったんだね

 

これは、先日のあの子の言葉です。

 

社会人になってからのあの子の考え方なんかを聞きながら、

ふと思い出していたのは、

仕事についてを語ってくれたいつかのあなたの言葉でした。

 

お父さんはね、こんな考え方で仕事に向き合っていたんだよ

 

あの子の話を聞き終えて、いつかのあなたが聞かせてくれた話をすれば、

あの子は言ったのです。

お父さんは、そういう人だったんだねって。

 

よく考えてみれば、

12歳であなたの手を離さなければならなかったあの子にとってのあなたは、

子供から見た大人の人。

どんなに記憶を辿っても、あの子の記憶の中にいるあなたは、

大きな手で、あの子の頭を撫でるあなたの姿なのかも知れません。

それは、

大人になったあの子の目線に置き換える術のない時間たちであるとも、

言えるのでしょう。

 

初めて触れたあなたの一面に、

あの子はとても嬉しそうにしていましたが、そんなあの子とは裏腹に、

私は、胸の奥に張り裂けそうな痛みを感じていました。

12歳であなたと離れるということは、こういうことなんだなって。

 

初めて知った痛みを静かに感じ切ってみれば、

やがて私の中へと見つけることが出来たのは、

これまでにはなかった視点でした。

 

此処から巣立ったあの子に、私が出来ることなど、

もう、殆ど何もないに等しいのだと、そんなふうにも考えていたけれど、

私にはまだやるべきことが残っているのかも知れないなって。

 

あなたを見送り、時々には、

あの子の知らないあなたとの思い出話を話して聞かせて来ましたが、

大人になった今のあの子にだからこそ、聞かせたいあなたのエピソードは、

きっとこの胸の中に、たくさん眠っているのでしょう。

 

大人なのか、子供なのか。

こんなふたつの括りに分けるとするのなら、

私たちと同じ括りの中へと仲間入りしたあの子にだからこそ、

伝えたいと思いました。

あなたがどんな大人だったのかを。

 

先日のあの子は、初めて知ったあなたの一面に、

喜びながら言っていました。

格好良いなって。

 

幼い頃から、あの子にとっての格好良い存在だったあなたは、

今でも、あの子の中での一番のヒーロー。

 

これからは、

大人になったあの子にだからこそ感じることの出来る、

あなたの格好良かったところを、たくさん伝えて行くからね。