あなたへ
あの子が歩む道が真っ直ぐであるように、
私が歩む道もまた、真っ直ぐなのだと、
何の前触れもなく突然に、こんな言葉をくれたのは、
何故だったのでしょうか。
いつも通り、お線香を立てて、
手を合わせながらあなたの顔を見つめた私の中へと、
突然に流れ込んで来たこの言葉が、
あなたがくれた言葉であると、そう確信したのは、
私が歩んで来たこの道が、真っ直ぐだったとは、
ただの一度も、思ったことがなかったからでした。
あなたがくれる言葉は、いつでも不思議です。
曲がりくねっていて、石ころばかりが転がっていて、
決して真っ直ぐに歩んでいるなどとは思えなかったこれまでの私が歩んだ道のりが、
あなたがくれた言葉によって突然に、
長い一本道へと修正されて見えたのです。
どんなに悩んでいても、立ち止まっていても、
次の一歩は、ちゃんと私にとっての真っ直ぐ前へと踏み出すことが出来ていて、
あの子と同じように私もまた、真っ直ぐに、真っ直ぐに、
此処までを歩んで来ることが出来ていたのだと、
こんな視点から、この人生を振り返った私は、
なんだか急に誇らしく思えて、
涙と笑みが同時に溢れ出てくるような不思議な気持ちがしました。
これも違う
あれも違う
こうじゃない!
試行錯誤を繰り返しながら必死に歩んだ私にとっての此処までの道のりは、
やはり平坦な道なんかじゃなかったけれど、
どんなに登り坂ばかりが続いていようとも、
石ころばかりが転がっていようとも、
それでもちゃんと、真っ直ぐに歩めていたという視点が、私にとって、
とても特別な意味を持ったのは、
本当はずっと、私もあの子みたいに真っ直ぐに、
前へと歩みたかったからなのかも知れません。
ねぇ、あなた
どうしてだろう
ねぇ、あなた
あれには何の意味があるのだろう
ねぇ、あなた・・・
こんな幾つもの問い掛けには、
ヒントすらくれなかった筈のあなただったけれど、
どうして急に、こんな言葉をくれたのだろう。
その理由については教えてくれずに、
いつも通りの穏やかな顔を向けてくれるばかりのあなただったけれど、
あなたがくれた言葉のお陰で、私に見える景色は一気に色が変わり、
足取りも、軽快なものへと変わったような気がします。
私が知らなかった視点を教えてくれたあなた。
ありがとう。
このまま真っ直ぐに、自信を持ってこの人生を歩んで行くからね。