あなたへ
朝の信号の待ち時間。
私の目に飛び込んで来たのは、看板に書かれた、
笑がお、という文字でした。
文字を見つめた瞬時に、
わらがお、と読んでしまったのは、
笑顔、ではなく、笑がお、と書かれていたからだったのか、
それとも、実はまだ、寝惚けていたからだったのでしょうか。
え?わらがお?いやいや、違うよ
えがお、でしょう?
小さく呟きながら、
思わず照れ笑いを浮かべた私の中へと蘇ったのは、
子供の頃の記憶でした。
あれは、小学何年生の頃の私だっただろう。
朝起きて、テレビを見つめた私の視界へと入ってきたのは、
竹村さん、という方の名前。
その名を見て、私は瞬時に、
ケケムラさん、と読んでしまったのでした。
竹という漢字が、カタカナのケケに見えてしまったのです。
この人、ケケムラさんて言うんだって。
聞いたことのない苗字を見つけた私は、
早速、母に知らせてみましたが、母の言葉にたけむらさんだと気が付いて、
朝から爆笑してしまった思い出。
蘇った記憶に、朝から笑ってしまった私ですが、
何故だか、ケケムラさんは、そのまま私の頭の中へと居座って、
ふとした瞬間に、頬が緩んでしまう1日を過ごしました。
偶然目に飛び込んで来た、笑がお、という言葉の通り、今日の私は、
まさに笑顔のままで、過ごすことが出来ましたよ。
もしも今日、あなたへ、
ケケムラさんの話をすることが出来たのなら、
あなたはどんな顔で笑ってくれたのだろう。
今の私なら、竹と、ケケを間違えることはないのでしょう。
幼かったからこそ出来た失敗だったのかも知れませんね。
あなたにも、こんな失敗はありましたか。
もしも今日、あなたの声を聞けたのなら、
あなたが語る思い出話に耳を傾けながら、
私は、どんなふうに笑ったのだろう。
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