あなたへ
随分と変わったな
こんな気持ちで、駅前辺りの景色を眺めたのは、この週末の私です。
駅から少しだけ離れた場所へ用事が出来た私は、
駅に車を停めて、あの辺りの景色を眺めながら、
目的地までを歩いてみようと突然に思い立ちました。
私が最後に、あの辺りを歩いたのは、
いつの頃のことだっただろう。
閉店したと噂に聞いていたあのデパートは、本当に閉店し、
あの頃とは全く印象の違う場所へと変わっていました。
かつてはたくさんの人で賑わっていた筈のビルの前で立ち止まり、
いつかの私が、そこから見ていた景色に思いを馳せて。
あの頃は何もなかった場所へ休憩所が出来ていたり、
あの頃は公衆電話が並んでいた場所は、
初めから何もなかったかのように、
その痕跡がすっかりとなくなっていたり。
あの頃の私たちが見ていた景色は、随分と様変わりし、
なんだか初めての地を歩いているかのような不思議な気持ちがしました。
あの辺りをぐるりと一周しながら、
あなたが見ることの出来なかった景色を眺めてみれば、
私の中へと蘇ったのは、
あなたと手を繋いで歩いた幾つもの記憶でした。
あの頃の私たちには、
全く想像もつかなかった景色へと変わったよ。
蘇った記憶の中にいるあなたへそっと呟けば、
私のすぐ側で笑っていたあの頃のあなたは、
あの頃のまま楽しそうに笑っているから、思わず頬が緩んで。
あなたを見送ってからの私は、
幾つくらいの変わり行く景色を見てきただろう。
そこに見つけるのは、いつでも胸の奥の小さな痛みだけれど、
存分に痛みを感じて、蘇った記憶を辿ったら、
あれからのこちら側の変わり行く景色も、大切に見つめながら、
こうしてあなたにも伝え続けて行くよ。
あれからの私が、
どんな景色の中を歩んで、何を感じたのかを。