あなたへ
ぬいぐるみが欲しい
何故だか突然に、
こんな感情を自分の中に見つけたのは、今朝のことでした。
ぬいぐるみが欲しいだなんて、
こんな気持ちを感じたのは、思えば初めてのことでした。
この気持ちは、一体、何なのだろう。
初めて湧き上がった感情を、とても不思議な気持ちで見つめながら、
思わず部屋中を見回してみたけれど、
今のこの家の中には、ぬいぐるみはありません。
以前は、お気に入りのぬいぐるみの幾つかを部屋に飾っていましたが、
あの子の巣立ちをきっかけに、大掃除をしたあの頃、
片付けをしながら、飾っていたぬいぐるみや、
大切に仕舞っていたぬいぐるみたちの殆どを手放しました。
今の私の手元に残るのは、数体のぬいぐるみたち。
それらは全て箱に入れて、大切に保管することにしました。
これまでに感じたことのない気持ちを不思議に思いながら、
押し入れに仕舞ったぬいぐるみたちの入った箱を開けて、
私が手に取ったのは、3体のぬいぐるみたちでした。
先ずは、シロクマのぬいぐるみ。
そう。これはね、中学生だったあの子が、
修学旅行へ行った先で、買って来てくれたのよ。
真っ白でとても綺麗なこの子は、汚れてしまうかも知れないからと、
大切に保管していたの。
それから、キャラクターのぬいぐるみ。
これはね、私がずっと欲しかったぬいぐるみだったの。
テーマパークで購入することの出来るこの子は、
あの子がそこへ出掛けた時に、買ってきてくれたのよ。
そう。これは丁度、私が新しい冒険として、
これまで知らなかった景色の中を歩み始めたあの頃のことでした。
私が見ていない間に、
あの子が私のお布団の枕元へと、この子を置いてくれたの。
この子を枕元に見つけた時の、あの嬉しかった気持ちも、
私の笑顔を見つめて嬉しそうに笑ったあの子の姿も、
今でもよく覚えています。
そして、3体目は、オコジョのぬいぐるみ。
ねぇ、あなたは覚えていますか。
これは、あなたがプレゼントしてくれたのよ。
あれは、私たちが出会ってから、
幾つの季節を迎えた頃だったでしょうか。
動物園へ出掛けたあの日、
お土産売り場にたくさん並んだぬいぐるみの中から、
この子を見つけたあなたは言ってくれたの。
これがいちばん可愛いね、買ってあげるよって。
この子は、毛並みがとても綺麗で、繊細で。
絶対に汚してはならないと、
あれからずっと、大切に仕舞っていたものでした。
それぞれのぬいぐるみたちを順番に見つめながら、
そこに詰まった思い出を、大切に反芻して。
そうして、それぞれが持つ手触りの良さと可愛さに癒されて。
何故、急に、ぬいぐるみが欲しいなどと、
こんな感情が湧き上がったのかは分かりませんが、
ぬいぐるみには、癒しの効果があるのだそうです。
私は特に、疲れなどいないつもりではありますが、
自覚がないままに、相当な疲れが溜まり、
無意識に、ふわふわで手触りの良いぬいぐるみに、
癒しを求めたのかも知れませんね。
折角なので、今夜は、
この子たちと一緒に、眠ってみようかなと思います。
ぬいぐるみと一緒に眠るだなんて、思えば子供の時以来ですが、
ふわふわとした可愛いこの子たちと眠れば、
自覚のない疲れも吹き飛ぶのかも知れませんね。
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