拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたと過ごした最後の春

あなたへ

 

携帯電話に入ったアプリを開くと、

不意に私の目に飛び込んで来たのは、見覚えのある景色でした。

 

あの日の私の瞳に映ったあの景色は、今でもよく覚えています。

そこは、家族3人で出掛けたテーマパークでした。

 

画面の向こう側。

かつてそこで笑っていた記憶を辿れば、聞こえて来たのは、あなたの声でした。

 

見て?

あんなところに誰かがいるよって。

 

パーク内の仕掛けを見つけるのが一番上手だったのは、あなたでしたね。

 

誰がいるの?

あっ!本当だ!

 

あなたの側に駆け寄って、

仕掛けを見つめる私たちの笑顔を確認すると、

あなたは更に、別な仕掛けを見つけて。

 

パーク内では、3人ともが大はしゃぎ。

初めて見た景色の中にいたあの日の私たちは、

こうして振り返ってみれば、3人の子供だったのかも知れません。

 

事前にインターネットで調べたグッズの中で、

あの子が一目惚れしていたのは、大きなぬいぐるみでした。

 

あの日のあの子は、あの大きなぬいぐるみを手に出来ることも、

とても楽しみにしていましたね。

 

ずっと大切にするね

ありがとう

 

大きなぬいぐるみを大切に抱えたあの子は、

本当に嬉しそうに笑っていましたっけ。

 

楽しみにしていたあの日の家族旅行は、天気にも恵まれて、

笑顔でいっぱいの楽しい旅行になりましたね。

 

不意に目に飛び込んで来た動画を見つめながら、

ただただ楽しかったあの日の家族旅行を思い出していました。

 

あれは、あなたと過ごした最後の春でした。

 

あの頃の私たちは、これからもずっと、

あの子の成長を一緒に見守れると思っていましたね。

 

あの子は、これからどんな中学生になるのだろう。

あの子は、これからどんな道を歩んで行くのだろうって。

 

あの日、あの子に買ってあげたぬいぐるみはね、

今でも大切に、あの子の部屋に飾られています。

 

この家へと越して来た時に、

あの子はあのぬいぐるみの特等席を準備したのよ。

 

この子は俺にとっての特別だからって。

 

ねぇ、あなたは覚えていますか。

家族3人で見つめたあの日の景色を。

 

あれは、私たちの最後の家族旅行でしたね。

 

 

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