拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

冷え切った車内で聞こえたあなたの声

あなたへ

 

朝の空気が一段と冷たく感じるのは、

年末年始を暖かく過ごせていたからなのでしょうか。

 

心が折れそうになった月曜日。

なんとか自分を奮い立たせた火曜日。

小さくため息を吐いてしまった水曜日。

 

そして、

寒いよー!って小さく声を上げながら、

小走りで駐車場へと向かったのは、今朝のことでした。

 

肩を竦めながら、冷え切った車へ乗り込む毎朝だけれど、

エンジンを掛けて、フロントガラスへ向けて暖房を全開に掛ければ、

自然とあなたの声が蘇って。

 

車を暖めてから出発する私の朝の僅かな時間は、

蘇ったあなたの声を反芻する時間となりました。

 

寒いね

ごめんね

ちょっと待っててね

今、暖かくなるからね

 

これは、私たちが出会ってから、

初めて迎えた冬の季節に聞こえたあなたの声です。

 

2人で遊びに出掛けたあの日。

たくさん遊んで、やがて車へと乗り込めば、車内はとても冷え切っていて。

寒さに震えて、思わず縮こまった私に掛けてくれた言葉でした。

 

記憶の中にいるあなたの横顔を見つめてみれば、

あの頃感じた気持ちまでもが鮮明に蘇って。

 

うん

ありがとう

 

あまりの寒さに、短く返事をすることしか出来ないままに、

あなただって寒い筈なのに、

寒いのは、あなたのせいじゃないのに、

この人は、こんなふうに言葉を掛けてくれる人なんだなって、

あの時の私は、こんな気持ちで、

エアコンを操作するあなたの横顔を見つめていました。

 

あなたは、

それまでの私が触れたことのなかった優しさを持った人でした。

 

あれから、あなたと一緒に、幾つもの冬を迎えたけれど、

冬のあなたは、いつでもあんなふうに、

寒がりな私を気遣って、言葉を掛けてくれましたね。

 

新しい年が明けて、日常生活へと戻れば、

一段と朝の空気を冷たく感じるようになったけれど、

車内の冷たい空気は、私たちが出会ってから、

初めて迎えた冬のあなたの声を思い出させてくれました。

 

今の私は毎朝、早い時間から出掛けています。

朝の空気の冷たさに、時々には、

弱音を吐いてしまうこともあるけれど、

あの頃のあなたの声がこうして寄り添ってくれているのだから、

私はきっと、このまま頑張れるのでしょう。