拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

巣立ちを迎えたあの子と私の成長

あなたへ

 

ハンドルを握り締めて、真っ直ぐに前を見た私の視界は、

不意に歪んで。

思わず強く瞬きをして、小さくため息を吐き出しながら呟いたのは、

飲み込むことの出来なかった本音でした。

 

あの子を駅まで送った帰り道、

あの子が巣立った日とよく似た気持ちを感じていたのは、

この年末年始のあの子の帰省の終わりの日のことでした。

 

あれから、1か月と少しが経ちました。

今日の私は、あの日のことを思い出していました。

 

今回の年末年始のあの子の帰省では、私は初めての気持ちを感じていましたが、

実は、あの子もまた、私と同じような気持ちを感じていたようでした。

 

このまま此処にいたいよ

帰りたくない

もう、こっちに帰って来ようかな

 

これは、今回の帰省終わりの日のあの子の声です。

 

此処から巣立ち、幾度かの帰省をしたあの子からは、

このまま此処にいたいと、時々、こんな声が聞こえましたが、

今回のあの子の声は、いつもとは違う色をしていました。

 

あの日のあの子の声が、あまりにも寂しい色をしているから、

私までもが余計に寂しくなって。

あの子と過ごした日常生活は、

既に終わりを迎えたのだと、改めて実感しながらも、

胸の奥が訴える私の声には耳を塞いで、

力強くあの子の背中を押して、精一杯のエールを贈ったのでした。

 

向こうでやりたいことがあるんでしょう?

これからも、キミの活躍を楽しみにしているよって。

 

だって、今のあの子が歩みたい道は、此処にはないもの。

 

あの子の巣立ちから、間も無く2年。

これまでの私が、様々な気持ちを見つけて来たように、

あの子もまた、私とはまた違った様々な気持ちを見つけながら、

前へと歩みを進めていたのかも知れません。

 

きっと私たちは互いに、

胸の奥に感じた気持ちの多くを言葉にはしないままに、

胸の中で静かにそれを咀嚼し続けて、

自分の胸の奥に合った形へと整えながら、

それぞれの場所で、自分にとっての前を見つめていたのでしょう。

 

あれからの私が、しっかりと前を向き、自分の道を歩んでいるように、

あの子もまた、此処から離れた場所で、しっかりと自分の道を歩んでいます。

 

先日のあの子からの電話では、相変わらずに元気な声が聞こえました。

帰省終わりの日の、あの、寂しい色はもう見えません。

そして、私の中にも、あの、

ギュッと締め付けられるような胸の痛みはもう、見つかりませんでした。

 

それはきっと、私たちはそれぞれの場所で、

それぞれの痛みと向き合うと同時に、自分自身と向き合い、

あれから少しずつ成長を重ねることが出来たからこそなのでしょう。

 

次のあの子の帰省を迎えれば、きっと私たちは互いにまた、

非日常となった時間を日常と錯覚するかのような感覚を覚えては、

胸の中に新たな痛みを感じるのだろうけれど、

巣立ちという大きな転機を迎えた私たちは、それぞれの立場から、

それまでの私たちが知らなかった痛みを知り、それを咀嚼し続けながらも、

それぞれにしっかりと前を見据え歩みながら、

少しずつ、成長を重ねて行くのでしょう。

 

 

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