拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

奇跡的なハーモーニー音

あなたへ

 

帰宅して、家の玄関の鍵を開けた瞬間に、

ちょっとだけ驚いてしまったのは、初めての音が聞こえたからでした。

 

私が玄関の鍵を開けた瞬間にね、全く同じタイミングで、

同じ階に住む方の玄関から、鍵を開ける音が聞こえたのです。

 

一瞬驚きながらも、私はドアを開けて家の中へと入りましたが、

鍵を開ける音から始まったその重なりは、

ドアを開ける音、そしてドアを閉める音までもが、綺麗に重なりました。

 

部屋へと入り、聞こえたばかりの音を反芻してみれば、

やがて私の中へと湧き上がったのは、小さな感動でした。

 

ドアを開けて家の中へ入った私と、

ドアを開けて家の外へ出たご近所さん。

 

真逆の行動を取るために、全く同じタイミングで、同じ音を立てるだなんて、

なんだか奇跡的ではありませんか。

 

此処に越して来てから数年が経ちますが、

こんなことは初めてのことです。

 

恐らくは、もう二度とこのような現象が起きることはないのでしょう。

そこで私は、

何の打ち合わせもないままに、

ご近所さんと私が偶然2人で奏でたこの音に、

奇跡的なハーモニー音と、名を付けることにしました。

 

今しがた起きたばかりの現象に、こうして名をつけてみれば、

生活リズムも家族構成も、年代も、全てが違う私たちは、

全く別な景色の中を歩んでいる筈なのに、

こうして重なり合う瞬間が生まれるだなんてと、

尚更に、特別な瞬間を見つけることが出来たような気がしてしまいました。

 

こんなふうに些細だけれど、ちょっとだけ奇跡的で面白い出来事は、

今、起こった出来事だからこそ、

誰かに話してみたくなるものなのかも知れません。

 

そんな物事についてを、

あの頃の私は、幾つくらいあなたに話しただろう。

 

くだらないんだけどさ、

なんて前置きをした些細な出来事の話にも、

あなたは楽しげに話を聞いてくれて。

そこから展開されるあなたの話も、なんだか楽しくて。

 

もしも今夜、あなたへこんな話が出来たのなら、

あなたはどんな顔で話を聞いてくれたのでしょうか。

 

 

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