あなたへ
あなたがくれた栞を挟んだ本を、日々少しずつ読み進めながら、
あれ?と思ったのは、
この本の内容が、随分と以前に一度だけ興味を持って、
学んでみようと試みた分野の視点から書かれた本だったからでした。
ほんの僅かにだけ学んだその分野は、
当時の私には難し過ぎて、何度同じ文字を辿ってみても、
理解が出来ないままに、早々に断念した類の分野でもありました。
私の中では既に忘れ去られた筈の分野が、
こうしてまた目の前へと現れてみれば、
そういうことだったのかと、
あの頃の時間に対して腑に落ちてしまうものを感じたのは、
いつかの私が見つけた視点があったからでした。
人生とは、実は私たちが思うよりもずっと上手く出来ていて、
日常の中の何気ない時間の中に、
自分の少し先の未来というものを見せてくれているものなのかも知れない。
今の自分にとって必要なものは、
実は過去に出会っているものなのかも知れないと、
こんな視点を見つけたのは、いつの頃のことだったでしょうか。
実に不思議ですが、またこうして不思議な現象を目の前にしてみれば、
あの頃の私もまた、気付かぬうちに、
未来を見ていたのだと、感じることが出来たのでした。
あの頃の私にとって、
とても難しかった分野の視点から書かれたこの本の内容には、
相変わらずに難しさを感じてもいますが、
今の私にとっては、何故だか強く惹きつけられるものを持っていて、
断念することなく、本を少しずつ読み進めることが出来ています。
きっと、この本を一度読んだだけでは、
全てを理解するこは出来ないのだと思います。
ですが、今の私にとっては、
何度でも読み返してみたいと思える本との出会いとなりました。
栞には、道標という意味があるのだと、
こんな言葉を聞いたことがあります。
なんだかとても不思議ですが、
あの頃のあなたがプレゼントしてくれた栞を使って読み進めるこの本へは、
実は、あなたが導いてくれていたのかも知れないと、
私には、こんなふうにも感じることが出来ました。
偶然この本と出会い、
栞を探した私の目には、いつかのあなたがくれた栞が偶然、目に留まって。
何故だか分からないけれど、
ずっと大切に保管していた筈のこの栞を使うに相応しい本なのだと感じて、
何の躊躇いもなく、使うことに決めて。
なんだかとても不思議ですが、
あの頃のあなたがくれたこの栞は、
あれからずっと先の未来の私が、この本に出会えた日に使えるようにと、
プレゼントしてくれたようにも思えてしまうのです。
人生の中には、時に、矛盾をも感じるような、
説明のつかない物事が起こることがあります。
ですが、人生とは、一見しただけでは読み取ることの出来ない、
複雑な糸が絡み合いながら、形成されているものなのかも知れませんね。