あなたへ
あれ?あ、そうだよね?
よし!よーーし!
私、よくやったね!
思わずガッツポーズを決めて、
ひとりで盛り上がってしまったのは、
あの、衝撃的な夢を見てから、
次の夏で、5年を迎えることに気が付いたからでした。
忘れもしません。
あれは、
あなたが帰って来てくれることを楽しみにしながら眠りに就いた、
5年前のお盆前日の夜。
夢に出て来たあなたは言ったのよね。
5年くらいが経ったら、再婚したら良いよって。
あまりにも衝撃的な夢から覚めた私は、
泣き出しそうな気持ちで、
冗談だよね?って、こんな言葉を掛けながら、
あなたの遺影を見つめたのでした。
そっか。
次の夏で、あの夢の中のあなたが言っていた5年後を迎えるんだね。
今日の私は、あれからの私が何を考え、何を積み重ねて来たのかを、
感慨深く振り返りました。
あれからの私も、
たくさん泣いてしまうこともあったし、
時には立ち止まってしまうこともあったけれど、
それでも私は、私のペースで歩みながら、
これを最後にしたいと思える涙と出会うことが出来て。
あの子の成長を見守りながら、
自分自身と向き合いながら、
やがて今の私へと成長することが出来ました。
例えば、例えばよ?
例えば憧れの、あのミュージシャンが突然目の前に現れて、
結婚を前提にお付き合いしてくださいって、
薔薇の花束を差し出して来たらどうする?
え?そっ・・・それは
それは・・・どうしようかな
ちょっと!なんで迷うわけ?
それじゃダメ!
あなたはどう生きたいの?
ちゃんとお断りして!
じゃなければ、
一生どころか、二生も三生も後悔するからね!
私にとって、あなた以上の人などいないのだとしながらも、
こうして時々には、頭の中で、
あり得ない妄想を繰り広げながら自問自答し、
お断りの文言までもを本気で考えてしまったのは、
あの日のあなたがご丁寧に、
恋愛祈願のお守りまでを私に渡してくれたからでした。
今、こうして思い返してみれば、
あの、出来過ぎた展開には笑ってしまいますが、
私たちにとっての今のあなたは、ご利益のある神様的存在でもあるのです。
そんなあなたから、
恋愛祈願などという内容のお守りを渡されれば、
恋愛という観点からも、
この人生についてを真剣に見つめてみなければならないのかも知れないと、
時々には、こんなことも考えてみたのです。
ですがもう、此処まで来れば安心でしょう。
だって私は今、
ちゃんとひとりで歩むことが出来ているもの。
こちらでは、間も無く春を迎えます。
春を迎えたら、夏が来るのです。
こんなに短期間で、
出会いから再婚だなんて有り得ないでしょう。
元々は、全くの赤の他人だった人と人が出会い、そして家族になるまで。
それは、幾つもの季節を共に過ごしながら、
ほんの少しずつ、2人で同じ景色を集めながら、
ほんの少しずつ、互いを知り、
やがて、同じ人生を歩むという道が見えてくるものなのです。
これが、私が知っている、
他人だった人と人が、家族になるまでの道のりなのです。
故に私は、既に安心出来る領域まで、
ひとりで歩むことが出来たと言えるのでしょう。
今日の私は、何処か勝ち誇りたいような気持ちで手紙を綴っていますが、
でも、本当は、今の私がこうして此処にいるのは、
あの夢を見せてくれたあなたのお陰なのかも知れません。
あの衝撃的な夢は、いつの頃からか、
そちら側のあなたから私への果し状のようにも思えて来て、
そちら側のあなたと勝負をするかのような気持ちで挑んだ5年間でもありましたが、
思えば、あの夢を見ることがなければ、
真剣に考えることのなかった幾つもの視点がありました。
より多くの角度から自分自身を見つめることは、
より具体的に、あの夢を見た日から5年後の自分がどう在りたいのかという、
自分自身への問いにも繋がりました。
こうして改めて振り返ってみれば、
あの夢の本当の意味は、
また別なところにあったのかも知れません。
そう。例えば、私が此処まで成長出来るようにと、
実は、全てがあなたの計算だったのかも知れないと、
今になって初めて、こんな視点を見つけたのです。
不意に見つけた新たな視点に、
なんだか別な意味で衝撃を受けてしまいましたが、
お陰で、私は此処まで成長することが出来ました。
随分と手荒なやり方だったわねと、
ほんの少しだけ、舌打ちしたいような気持ちを見つけてもしまいましたが、
これもまた、私のことを熟知するあなただからこそ、
敢えて選んだやり方だったのでしょう。
私を此処まで成長させてくれたあなた。
ありがとう。
次の夏を迎えたのなら、
私は、どんな気持ちを感じることが出来るのだろう。
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