拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

キャラメルを握り締めた右手を見つめたままで

あなたへ

 

自分の部屋へ持って行こうと、

幾つかのキャラメルを握り締めた右手を何気なく見つめてみれば、

不意に笑いが込み上げてしまいました。

 

だってさ、

欲しい分だけのキャラメルを握り締めた右手の指の隙間からは、

包み紙が少しだけ見えていてさ、

あの日のあなたの右手と、よく似ていたんだもの。

 

ねぇ、あなたは覚えていますか。

 

救急搬送から数日が経ち、

奇跡的な回復を遂げたあなたが、漸く、

飲み物と飴を口に出来たあの日のことを。

 

キャンディをひとつ口に入れたあなたは、とても嬉しそうな顔をしながら、

こっそりと、幾つかのキャンディを握り締めて。

 

右手の指の隙間からは、しっかりと包み紙が見えているのに、

誰も気付かないだろうと言わんばかりの顔で、

そっと静かに右手を隠そうとしていましたね。

 

そんなあなたを諭せば、

素直に袋の中へとキャンディを戻していたけれど、

あの時のあなたは、

悪戯が見つかった子供みたいな顔をしていましたっけ。

 

あれは、あなたがすること、ひとつひとつが、

可笑しくて、愛おしくて、全てが嬉しかった日。

 

あれから、数日後には、

あなたのその手を離さなければならなくなってしまったけれど、

きっとさ、

とても楽しかった記憶ってさ、

とても嬉しかった記憶ってさ、

とても幸せだった記憶ってさ、

この後にどんな時間があろうとも、少しも形が変わることなく、

同じ形の記憶として、胸の中へと残り続けるものなんだね。

 

だってさ、

右手にキャラメルを握り締めたままの私は、

記憶の中にいるあの日のあなたと一緒に、

笑っているような気がしてしまったんだ。

 

なんだかとても楽しくて。

なんだかとても嬉しくて。

そんな奇跡みたいなあの時間の中にいたあなたと一緒にさ。

 

 

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