あなたへ
先日の、ただ春を感じる1日に撮った写真を眺めていました。
あの日見つけた空の色。
あの日見つけた春の色。
この手の中に収めたばかりのそれらを眺めながら、
あの日の私が見つけた景色を思い出していました。
あの日の私は、歳を重ねたご夫婦が手を繋いで歩く姿を、
幾つくらい見つけただろう。
ゆっくりと2人だけのペースで歩くその後ろ姿は、とても素敵で、
やっぱり、なんだかちょっとだけ羨ましくて。
あの夏からの私は、相変わらずに、
私よりもずっと歳を重ねたご夫婦にばかり目が向いてしまうけれど、
でも、そんな時に、私の中へと自然と蘇るのは、相変わらずに、
手でも繋ぎますかって、いつかのあなたの声と、あなたのその手の温もりなのです。
私は、これでいい。
あなたと過ごした16年間の中には、
この一生分の色々が、ちゃんと詰まっているのだから。
だから私は寂しくはないし、
この人生を生きる今の私には、やるべきことがちゃんとあるのだから。
そんなふうに自分なりに納得を重ねて、この人生を歩んで来たつもりだったのに、
私は本当は、年を重ねたあなたと手を繋いで歩いてみたかったのだと、
こんな本音を見つけてしまったのは、
あの日の私が、歳を重ねた手と手を繋ぐ幾つもの姿を、
見つけてしまったからなのかも知れません。
この世界で、私がひとつひとつ年を重ねるように、
私の隣で、ひとつひとつ年を重ねるあなたに本当は会いたかったし、
本当は、一緒に年を重ねたあなたと、あんなふうに、手を繋いで歩きたかった。
そこに感じる温もりには、
きっと年を重ねた分だけの色々な何かが詰まっていて、
私が知ることの出来なかったものを感じることが出来た筈なの。
本当は、そんなあなたの手の温もりを感じてみたかった。
胸の奥が訴え続ける本当の気持ちは、ギュッと私を掴んだままで。
痛い程に私をギュッと掴む気持ちと向き合いながら、
思わず手を強く握り締めてしまったけれど、
そんな私を穏やかな風が優しく抱き締めてくれたから、
あの日の私は、安心して、
私の本当の気持ちを感じ切ることが出来たのでした。
私は相変わらずに、
不意に感じる痛みと向き合っては、
何度でも、あの夏の運命が違っていたのならと思いを馳せてしまうけれど、
きっとね、この生が此処にある限り、私はあなたへの、
『愛しむ』を見つけて行くのでしょう。
それらひとつひとつも、大切に感じ切りながら、大切に集めて行くよ。
都度に感じるそれらはきっと、
ひとつとして同じ形のない、『愛しむ』だと思うから。
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