あなたへ
ただ春を感じる1日と題して出掛けたあの日には、
まだ小さな蕾だった筈なのに、いつの間にかその膨らみが増して、
気が付けば、僅かに桜の蕾が開き始めました。
今日のこちらでは、朝から雨が降っていましたが、
なんだか待ち切れない気持ちで、
傘を差して、いつもの公園へと出掛けました。
雨の日の公園は、とても静か。
なんだかそこに流れる時間だけが止まっているかのような、
不思議な錯覚を覚えながらも、
幾つかの桜の花を見つめながら、ゆっくりと、その景色を楽しみました。
開いたばかりの桜の花も、
ピンク色の蕾も、とても可愛い。
優しい雨の音が、私だけの静かな世界を作り出してくれるから、
今日の私は、先日とはまた違った形で、春を楽しむことが出来ました。
今年は、桜を見に行こうね
ねぇ、あなた。
あの頃の私たちは、何度、こんな約束を交わしただろう。
毎年の春の始まりには、必ず今度の約束を交わしながらも、
一度もその約束が果たされることはなかったけれど、
忙しそうなあなたの姿を見つめながら、
いつか、もっと歳を重ねたら、
きっとゆっくりと桜の景色を見ることが出来る筈だからって、
過ぎ行く桜の景色を毎年見送りながら、
密かに、ずっとずっと先の未来を楽しみに、思い描いたりもしていたのでした。
雨が作り出す静かな春の景色の中で、
あなたと交わした幾つもの春の今度の約束を思い出していました。
ねぇ、あなた。
あの頃の私たちの今度の約束は、叶わなかったけれど、
あなたの分と2人分、
今年の春の桜の景色も、大切に集めて行くからね。
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