あなたへ
私の中へと不意に蘇ったのは、
以前の職場の先輩が聞かせてくれた、運命の人との出会いの話でした。
私の友達がね、昔、車で接触事故を起こしてしまったのよ
幸いなことに怪我もなくて、大事には至らなかったんだけれどね
その友達は後に、その時の事故の相手と結婚したのよ
出会いって、本当に何処にあるのか分からないものよね
先輩がこんな話を聞かせてくれたのは、
あなたを見送ってから、どのくらいが経った頃だっただろう。
運命的な出会いは確かに存在し、そして、偶然を装った必然や、
目には見えない不思議な力というものも、確かに存在するのだと、
あの日の私は、
こんな証拠をひとつ集めることが出来た筈だったのに、
すっかりと胸の奥底へと記憶が仕舞われてしまったのは、
あの頃の私がまだ、自分にとっての前を、
しっかりと見つける前の私だったからなのかも知れません。
きっとね、先輩が話して聞かせてくれた2人は、
一番最低の日を、一番最高の日に変えようって、
例えばこんな約束をして生まれて来たのよ。
その出会い方は衝撃的でありながらも、
2人に怪我がなかったことは、きっと強く守られていた証拠でもあったのでしょう。
不思議な物事や、運命的なエピソード。
それらをひとつ見つける度に、
あなたにも伝えてみたくなってしまう私は、今回蘇ったエピソードも、
こうしてあなたへの手紙に綴ってみることにしましたが、
文字を綴りながら、
改めて、先輩が話してくれたエピソードを反芻してみれば、
この話に至るまでの先輩の言葉が蘇りました。
そう。これは、あなたを亡くした私を心配してくれていた先輩が、
再婚という選択肢もあるのかも知れないよと、
こんなふうに言葉を掛けてくれたと共に、
この、運命的とも呼べる出会いについての話を聞かせてくれたのでした。
あの時の先輩は、こうも言っていました。
今は苦しいかも知れないけれど、
これから先では突然の出会いだってあるかも知れないよ
何が起こるのか分からないのが、人生だからって。
あれからの私は、少しずつ時間を掛けて、
自分にとっての前を見つけ、
どう生きて行きたいのかと、
自分自身へ問い掛けられる私へと成長することが出来ました。
これまでの私は、自分で、
ひとりで生きることを選択して来たようにも考えていましたが、
どんなに頑張っても避けることの出来ないものが運命であるとするのなら、
実は私は、生まれる前に、ちゃんと決めて来ていたのかも知れません。
どんなに遠くに離れてしまっても、
私は、あなただけを想いながら生きるのだと。
どう生きたいのか
どんな自分になりたいのか
自分自身へこう問い掛けた時に導き出される答えとは、
実は、生まれる前に自分で決めて来ていた物事でもあるのかも知れませんね。
不意に蘇った記憶から、
こうして新たな視点を見つけることが出来たのは、
これで幾つ目だっただろう。
今回の私は、私の中へと蘇った知らない方の今度の約束についてを、
あなたにも話してみたかっただけであった筈なのに、
まさか、こんな視点を見つけることが出来るだなんてね。
本当に、何が起こるのか分からないのが人生、なのかも知れませんね。
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