あなたへ
こちらでは、随分と暖かく、過ごしやすい時期となって来ました。
だからでしょうか。
今朝の私は、思いっきり寝坊をしてしまいました。
時計を見て飛び起きて、思わず頭を抱え込みながら、
思い出していたのは、いつかの春の季節に聞こえた声でした。
あなた、そんなに眠れるの?
まだ若い証拠ねって。
これは、今よりもずっと若かった頃の私に掛けられた言葉でした。
あの日の話題は、睡眠時間についてでした。
春になると何故だか眠くなることや、
眠ろうと思えば、何時間でも眠っていられるという話をした私の声に、
それはまだ若い証拠だと、こんな言葉が返って来たのでした。
年齢と共に、そんなには眠れなくなるのよ
眠るにも体力が必要だから
朝は早くに目が覚めるし、二度寝も出来なくなるものよ
あの日のこんな言葉に耳を傾けた私は、
密かに、年齢を重ねるのが楽しみになったのでした。
だって、朝早くに目が覚めるということは、
そして、二度寝が出来ないということは、
とてもスッキリとした目覚めだということなのでしょう。
朝は頑張って起きなければならないという感覚しか知らなかった私にとってのそれは、
ある種の憧れのようなものでもありました。
今朝の私は、寝坊に後悔しながらも、
思えば私には、
まだそのような時期がやって来てはいないことに気が付いて。
私は相変わらずに、眠ろうと思えば何時間でも眠れるし、
二度寝どころか、三度寝、四度寝と、
何度寝でもしようと思えば出来てしまいます。
密かに、年齢を重ねることを楽しみに思い描いていたあれから、
随分と長い月日が経ち、私は、あなたよりも7つ年上になりましたが、
まだあの頃の彼女の言う感覚が分からずにいます。
これから更に年を重ね行けば、いつの日か、
それが分かる時が来るのかも知れませんね。
あの言葉をくれた彼女が幾つくらいの年齢であったのかは分かりませんが、
私にもやがてその時がやって来たのなら、
随分と朝早くに目が覚めてしまったにも関わらず、再び眠ることも出来ずに、
早朝に、あなたへの手紙を送ってみる、
なんて朝もあるのかも知れませんね。
ひとつひとつ、年齢を重ねる毎に、
新たな視点を見つけ、新たな自分を見つけ、
そして、自分の成長も見つけることが出来るようになりましたが、
若かった頃の自分が密かに憧れた感覚を知れるようになることも、
なんだかとても楽しみです。
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