あなたへ
コンクリートの隙間から生えた雑草を見つめながら、
思わず頬が緩んでしまったのは、
不意に蘇った一コマの中にいたあなたが、とても可笑しかったからでした。
ねぇ、あなたは覚えていますか。
幼いあの子と3人で、公園へ出掛けたあの日。
たくさん遊んでひと休みの時間には、
レジャーシートに座ってお茶を飲みながらお喋りをしたけれど、
あなたったら、何故だか突然に、
レジャーシートの近くに生えていた雑草を抜き始めて。
公園の雑草まで草取りしなくても良いんだよって、こんな私の声に、
え?あ、間違えた
なんて、無意識に雑草を抜く自分に気が付いて、あなたは笑っていましたっけ。
あの日の前日は確か、3人で家の庭の草取りをした日で。
昨日、あんなに草取りをしたのに、物足りなかったの?って、
こんな私の言葉に、更に笑いましたね。
あの夏からどんなに先へと歩んでも、あの頃の何気ない日常の中の一コマは、
こうして突然に強く輝いて、あれからずっと先の未来にいる私を笑顔にしてくれて。
こんなふうに、不意に笑みが溢れるとね、
私は何度でも思ってしまうんだ。
あなたと家族になれて良かったなって。
こちらでは、桜の時期はとうに過ぎ、気が付けば、
初夏を思わせる爽やかな風が、若い緑色たちを揺らす季節となりました。
家族3人で暮らしたあの家では、この時期になると、雑草が生えて来て。
草取りもしなきゃねって、こんなやりとりと共に、
どちらからともなく、小さなため息が漏れ出てしまう時期でもあったけれど、
あなたと2人でため息を吐く恒例の瞬間もまた、
本当は幸せな瞬間だったのだと、
今の私には、そんなふうにも思えました。
1ページ目はこちらより↓↓