拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたと過ごした合計時間

あなたへ

 

ねぇ、あなた。

あの頃の私たちは、

合計で、どのくらいの時間を一緒に過ごしたのだろう。

 

あの頃の時間を、こんな視点から見つめてみることが出来たのは、

ある人との出会いがきっかけでした。

 

家に帰ることが出来るのは年に数十日程度。

先日の私には、こんな生活を送る方との出会いがありました。

 

仕事柄、1年の大半は、

日本中のあちこちを飛び回っているのだと言うその方は、

たまに家に帰ると、居場所がないのだと、こんな話を聞かせてくれましたが、

なんだかとても楽しそうに笑っていたことが、とても印象的でした。

 

多忙な日々を送るその方にはご家庭があるそうですが、

家族と一緒に過ごすことが出来るのも、その数十日のみであり、

普段は、家族とは別々の時間を過ごしているのだそうです。

 

様々な生き方があり、様々な家庭の在り方があるのだと、

あの日の私は、その方の話を興味深く聞きながら、

私が知らないその世界を思い描いてみたりもしたのでした。

 

あの日の時間を何気なく反芻してみれば、

やがて見つけることが出来たのは、新たな視点でした。

 

あの頃の私たちは、

合計で、どのくらいの時間を一緒に過ごしたのだろうって。

 

仕事が忙しく、お休みも少なかったし、

遅い時間に帰宅することだってあったあなただけれど、

でも、あなたが帰って来ない夜は、殆どありませんでした。

 

そう。あなたが入院することになったあの夏を除けば恐らくは、

私とあの子の2人だけの夜を過ごしたのは、片手で数えられる程度。

 

あの頃の私は、それが当たり前であるようにも思っていたけれど、

家族が毎日、同じ家に揃うことだって、

本当は、当たり前なんかじゃなかったのかも知れません。

 

あなたがお休みの日には、家族3人で過ごすことも、

あの頃の私にとっては当たり前だったけれど、

本当はそれだって、

当たり前の家族の在り方では、きっとなかったのでしょう。

 

もしもほんの少しだけ、何かが違っていたのなら、

今の私が知らないままの時間だって存在していたのかも知れません。

 

家族3人で笑い合った時間。

そして、同じ屋根の下で、家族3人が揃って眠った時間。

 

もしもその合計時間を出すことが出来たとしたのなら、

驚くような数字が算出されるのかも知れませんね。

 

スーパーでも何処でも、出掛ける時には必ず一緒に行こう。

 

あなたがしてくれた約束を、改めて思い出してみます。

 

あの頃のあなたが、あの約束を守り続けてくれていたから、

この辺りの何処へ行っても、あなたとの思い出が散りばめられていて。

 

だからこそきっと尚更に、

私は、相変わらずに、不意に寂しさを感じてしまうこともあるけれど、

何処へ行ってもあなたと過ごした記憶を辿ることが出来るのだって、

本当は、当たり前なんかじゃなかったのかも知れません。

 

私たちは確かに、随分と早くに離れなければならなかったけれど、

ほんの少しだけ視点を変えて見てみるとするのなら、

様々な生き方がある中で、あなたは、

私たちと共に過ごす時間を選び続けてくれていたようにも思えました。

あの夏からずっと先の未来の分まで、その時間を詰め込むかのように。

 

私が知らなかった生き方を知ることが出来た私は、

またひとつ、新たな視点から、あの頃の時間を振り返ることが出来ました。

 

あの日の私が出会った方は、

私にこのことを気付かせるために出会ってくれた人だったのかも知れません。

 

 

 

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