拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

有限の生を装飾するもの

あなたへ

 

そっと静かにあなたのその頬に手を伸ばしてみたけれど、

やはり期待通りの感触を得ることが出来ないままに、

あなたがくれたペアリングを眺めていました。

 

右手の薬指。

このリングのかつての居場所で、その感触を確かめてみれば、

私の中へと蘇ったのは、このリングを初めて付けたあの日の気持ちでした。

 

あなたとのペアリングが、ただただ嬉しくて、隠し切れない笑みが零れ落ちて。

 

あれからの私は、右手の薬指にその形を確認する度に、

何度でも、あの気持ちを反芻したのでした。

 

時間という概念が存在するこの世界では、

ほんの僅かな瞬間さえも、

今を今のままとして捕まえておくことは出来ないけれど、

過去へと成り行く時間が、幻になってしまわぬように、

この世界には形が存在するのかも知れないと、

不意にこんな視点を見つけることが出来たのは、

あなたがくれたこのペアリングのお陰なのでしょう。

 

右手の薬指につけたリングは、

このリングを初めてつけた日に感じたあの瞬間の気持ちも、

あなたが側にいてくれた日々も、

全て幻なんかではないのだと、

私に強く主張し続けるかのように、特有の重みを私に感じさせ続けて。

 

過去という時間に、もう一度触れることは出来ないけれど、

形に触れることは、過去という瞬間に触れることと同じことなのかも知れません。

 

今を迎えた瞬間に、過去へと成り行くこの世界では、

どんなに愛おしい瞬間であっても、楽しくて仕方がない瞬間であっても、

その時に感じた気持ちもまた、ゆっくりと変わり行くけれど、

その代わりに、大切な今を永遠に閉じ込めておけるようにと、

形が存在するという見方をすることも出来るのかも知れません。

 

形のある贈り物って、

きっと、その瞬間に感じた想いを永遠の形に閉じ込めておけるもの。

だからこそ、右手の薬指につけたリングは、

あの頃の記憶をより鮮明な記憶として、蘇らせてくれたのでしょう。

 

大切な瞬間に出会うことが出来た時、

それを意識せずとも、きっと誰もが、

時間を止めておきたいと望んでいるのかも知れません。

 

だからこそ、この世界には、大切な人へ贈り物をする文化があり、

写真や動画が存在するのかも知れませんね。

 

そう。だからあの頃の私たちは、互いにたくさんの贈り物を贈り合い、

そして、写真や動画を大切に集めていたのでしょう。

 

今、この瞬間が、幻にならないようにと。

 

時間という概念に沿って存在する有限の生を、

よりリアルに、そして美しく装飾するために、

この世界は形で作られているのかも知れません。

 

右手の薬指に感じた重みは、私に新たな視点を見つけさせ、

私はまた新たな生への美しさを知ることが出来ました。

 

いつの日か、全ての視点を見つけ終えたと感じた時、

私は、生に対するどんな気持ちを感じることが出来るのでしょうか。

 

 

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