あなたへ
あれからの私は、
どれだけの掛け替えのないものを集めただろう。
この世界に流れる時間に必死に抵抗しながら、
あの夏のあなたに、
真っ直ぐに手を伸ばしていた筈だった私の手の中には、
随分とたくさんの素敵なものが集まりました。
あの子と笑い合った時間。
互いの夢についてを語り合った時間。
あの子の成長が、
どれだけ愛おしいものであるのかを感じ続けることが出来た日々。
そして、遠くで頑張るあの子を応援出来る今だって、とても愛おしい時間。
この世界にあなたの姿は見えなくとも、
あなたまでもが消えていなくなってしまったわけではないという数々の証拠。
あなたが私に託してくれたもの。
あの夏にいたあなたの本当の想い。
あの夏からずっと先へと歩まなければ、
見つけることの出来なかった視点や発見たちは、
あなたからの贈り物だと言えるのでしょう。
それらひとつひとつを見つけながら歩むこの人生は、
仕掛けのある絵本を巡りながら歩むような人生でもあるのだと、
今の私は、この人生に対して、こんなふうにも感じています。
あなたがいないこの世界を生き続けることは、
痛みを知り続けることでもきっとあるけれど、
私は、絶対に知りたくなどなかった痛みの先に、
何があるのかを知ることが出来ました。
此処から先へと歩んで行けば、
今の私がまだ知らない痛みを見つける日もあるけれど、
きっとそこにいる私は、
今の私が知らない素敵なものもたくさん見つけているのでしょう。
自分の夢を見つけ、それが目標へと変わった日があって。
試行錯誤を繰り返しながら前へと歩む私は、
私が思っていたよりもずっと不器用で、なんだか笑ってしまうけれど、
それでも絶対に諦めたくないと思えるものを見つけることが出来ました。
今の私の手の中には、
いつまでも手に取って眺めていたくなってしまうような、
素敵なものたちがたくさん集まりました。
これら全ては、
この世界に生きていなければ、
集めることの出来なかった素敵なものたちです。
5月の風を感じると、
毎年の私が思い出すのは、あの日のことです。
どんなふうに過ごしていたのか、記憶のないあの日の私の命は、
確かにこの世界へと繋ぎ止められました。
5月の風は、あれからの私の道のりを振り返らせては、
何を見つけ、どう成長して来たのかを問い掛けて来て。
それらひとつひとつに答えながら、私は思うのです。
あの日が終わりの日じゃなくて良かった。
生きていて、良かったなって。
こちらでは、間も無く5月が終わりを迎えます。
この5月の私は何度くらい、あの日を、
そして、あの日から此処までに集めたものを見つめただろう。
今日の私が此処にあるのも、あなたとあの子のお陰です。
私の素敵な家族に感謝しながら、
残り僅かとなった今年の5月も、大切に歩んで行こうと思います。
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