拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの年のお盆の記憶

あなたへ

 

ねぇ、あなた

一緒に来て

 

何気なくテレビ画面を見つめた私の中へと蘇ったのは、

こんな私の声でした。

 

あの日の私が、あなたに一緒に来てとお願いしたのは、トイレでした。

 

そう言えばあの時。

蘇った声に思わず笑いながら、記憶を辿ったのは、

あなたと一緒に過ごした最後のお盆のことでした。

 

そう。あの年は、あなたのお父さんの新盆を迎えた年でした。

あなたの妹家族、それから、私たち家族。

あなたの実家へ皆で泊まり込んだお父さんの新盆は、

とても賑やかなお盆となりましたね。

 

たくさんの方がお父さんに会いに来てくれたあの年のお盆は、

とても忙しいお盆でもありましたが、

皆で寛いでいた時間もありました。

 

夏だし、ホラー映画でも観ようかって誰かの声に、

ホラー映画のDVDが再生されたのは、そんなひと時の中でのことでした。

 

怖がりなくせに、あの日の私は、皆が一緒なら怖くないと鷹を括り、

普段は絶対に観ない類であるホラー映画を鑑賞しましたが、

そんな時に限って、行きたくなってしまうのがトイレであるのは、

何故なのでしょうか。

 

一旦は、ひとりでトイレの前まで行ったものの、

どうしても怖くてトイレのドアを開けることが出来ずに、

あなたを呼びに行ったことは、今こうして思い返してみれば、

なんだか笑ってしまう流れでした。

 

トイレ付き合って

 

女子という生き物は、何故だか群れでトイレに行く習性を持っており、

私にもまたそんな時代がありましたが、

まさか、この人生の中で、最後にトイレに付き合ってもらったのが、

あなただだなんてね。

 

なんだか笑ってしまうけれど、

ドアを開けた時に、

あなたがちゃんと待っていてくれたことが、とても嬉しかったよ。

 

記憶に蘇ったあの日のことが、どうにも可笑しくて、笑いは後を引き、

それは、あの頃のことを鮮明に思い出すきっかけへと繋がって行きました。

 

そうだった。

あの時の私たちは、確かに大喧嘩もしたけれど、

あんなふうに、笑ってもいたんだなって。

 

アップルパイを買いに行こうと誘ってくれたあなたと、

些細なことで大喧嘩になって。

 

あなたに伝えることが出来なかった、あの時ごめんねが消えないままに、

私はずっと、あの時の大喧嘩のことばかりが気になっていたけれど、

本当はさ、あんなふうに、

一緒に笑っていた時間の方が多かったんだね。

 

あぁ、そっか。そうだったんだって、不意に気が付いてみれば、

なんだか、胸の奥にあった何かが漸く外れたような、

何かが軽くなったような、そんな不思議な気持ちがしました。

 

ねぇ、あなた。

あの年のお盆はさ、

喧嘩もしたけれど、一緒にたくさん笑ってさ、

とても素敵な時間を過ごすことが出来たね。

 

 

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