あなたへ
いつもの公園内のルートには、
植木を正面に見て、右側を通るのか、左側を通るのか、
人それぞれ違う場所が1箇所だけあることを、あなたは知っていましたか。
あなたはね、あの植木のある場所に差し掛かると、
初めからそれが当たり前であるかのように、
左側を通っていたのよ。
この辺りで育った私にとってのいつもの公園は、
子供の頃から、深い馴染みのある公園ですが、
実は、あなたと一緒にあの公園へ行くまでは、
植木の右側を通ることが私にとっての当たり前のルートでした。
何度も行っていた公園である筈なのに、
私があの植木の左側を通ったのは、
実はあなたと家族になってからが初めてのことでした。
あなたと一緒に、初めてあの植木の左側を歩いた時にね、思ったのです。
子供の頃から何度も来ている筈の公園なのに、
こんなにも見える景色が違うんだなって。
ベビーカーを押して、
あの子を抱いて、
あの子と手を繋いで、
ボールを持ったあの子を追いかけるように。
家族3人で、何度もいつもの公園へと足を運ぶうちに、
いつの間にか、あの植木の左側を歩くことは、私の中での当たり前となり、
そこから見える景色もまた、私にとっての当たり前の景色へと変わって行きました。
私がひとりで散歩へ出掛けるようになってから、
もう、どのくらいが経つでしょうか。
思えばかつての私は、
あの植木の右側を歩くことが当たり前であった筈なのに、いつの間にか、
左側を歩くことが当たり前へと変わっていたんだなと、
ふと気が付いた日がありました。
あの植木のある場所に差し掛かると、私はいつでもそこで立ち止まり、
早くおいでよって、
少し遅れて歩いた私を待ってくれていた2人の姿を探してしまうけれど、
それは、私にとってのあの場所が、
家族3人での特別な場所だからなのかも知れません。
私はきっとこれからも、あの植木の左側を歩く度に、つい立ち止まって、
あの頃の私が見たあなたの笑顔を、あなたの隣に並んだあの子の姿を、
そこに探してしまうのでしょう。
きっとずっと、何年が経っても、何度でも。
あの場所が、あの頃から変わらずにいてくれる限り。
ここ最近のこちらでは、
雨や曇りの日が続き、肌寒さを感じる日々が続いています。
今日も、肌寒い風が吹く1日でしたが、
少しだけ、いつもの公園へと散歩に出掛けました。
今日の私もまた、あの植木の左側で、つい足を止めて、
辺りを見回して、かつてのそこに聞こえた筈の声を、姿を、探してしまいました。
ゆっくりと歩く私を、「あの頃」が待っていてくれるような気がして。
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