拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

息を引き取ったあなたに掛けた言葉

あなたへ

 

この世界には、存在する人の数だけの人生があり、

経験もまた、人の数だけ存在すると言えるのでしょう。

 

臨死体験。

あの日の私がこんな言葉に興味を惹かれたのは、

それが私の知らない世界であったからなのかも知れません。

 

あの日、私が偶然見つけたのは、臨死体験に纏わる動画でした。

怖い話は苦手な私ですが、不思議な話には、とても興味があります。

 

そのタイトルに惹かれるままに、これは是非とも観てみなければと、

迷わずに再生することにしたのでした。

 

体から魂が抜け出た後が、

どのようなものであるのを解説されたその動画の中で、

やがて語られたのは、自分の体に戻る方法というものでした。

 

私はまだ一度も、この体から魂だけが抜け出てしまったことはありませんが、

イメージ的には、自分の体に近付けば、

簡単に元に戻れることを思い描いていました。

 

ですがどうやら、そうではなく、

自分の体に戻ろうとしても、ボヨンと跳ね返されるのだと、

こんな説明がありました。

 

ねぇ、あの日のあなたもボヨンてしたの?

 

特にあなたからの返事を期待したわけでもなかったけれど、

なんとなく、あなたにこんな言葉を掛けてみたのは、

その表現が私のツボに嵌り、なんだか面白かったからという理由だけのことでした。

あの質問は、軽い冗談のつもりだったのです。

 

それなのに、私の中へと流れ込んで来たのは、

俺はその時を知っていたから、戻ろうとはしなかったのだと、

こんなあなたの想いでした。

 

ねぇ、どうして?

どうしてあなたはいつも不意をついて、答えをくれるの?

 

あの日の私は、もしも、あなたが肉体への戻り方を知っていたのなら、

違う未来が此処に流れていたのだろうかと、

僅かにこんな気持ちを見つけてもいました。

 

それなのに、予期せず届いたあなたの想いは、

やはり全てを受け入れなければならなかったのだと、

落胆とも、諦めともまた少し違う、

静かなものが私の胸の奥を強く掴んだのでした。

 

そっか

あなたは、あの日、自分の体に戻ろうとはしなかったんだね

ただ静かに、受け入れたんだね

 

胸の奥を掴む痛みを感じ切るように、小さく呟けば、

あの日のあなたが何故、あんなに良い顔を見せてくれたのかが、

漸く、分かったような気がしたのでした。

 

素敵なものをたくさん集めることが出来た。

生き切った。

良い人生だったって、

きっとあなたは最期に、私たちに伝えてくれていたんだね。

 

声を出すことが出来なくなったあなたは、

その笑顔で、その想いの全てを、伝えてくれていたんだね。

 

運命は、変えられない。

 

あの日のあなたは、

その最期の時を静かに受け入れて、

その胸の中へと集まったたくさんの素敵なものたちを大切に抱き締めながら、

全てに納得し、その肉体から離れたのでしょう。

 

だからこそあなたは、

私がずっとやり直したいと思っていた1日でさえも、

もう十分、だったんだね。

 

あの夏からの私は、様々に、あの日のことを考え続けて来ました。

 

あの時のあなたは何を考え、

どんな気持ちでその時を迎えたのだろうかと。

様々に想いを巡らせては、その時々で、私なりの答えを見つけて来ました。

 

冗談半分で聞いた質問に、

こんな答えが見つかってしまうだなんて思わなかったけれど、

私には、そのタイミングがやって来ていたのかも知れません。

だからこその流れが実は作られていたと、

こんな見方をすることも出来るのかも知れません。

 

新たな答えを大切に胸の中へと収めながら、改めて、

取り乱すことも、泣き叫ぶこともせず、

やって来てしまったその時を、

ただ、受け入れるしかなかったあの日のことを思い返してみれば、

あの日の私が納得せざるを得なかったのもまた、

実はそういう理由が隠されていたのかも知れないと、

ふと、こんな視点をひとつ見つけることが出来ました。

 

本当は、とても嫌だけれど

本当は、もっと一緒にいたいけれど

本当は、

本当は・・・

 

自分の中での、本当は、を必死で乗り越えて、

あなたの手を離すことが出来たのは、

私の意識よりも、更に深い部分では、

あなたの声のない想いを感じ取ることが出来ていたからなのかも知れません。

 

だからこそ、私はあの時、

分かったよと、あなたに声を掛けたのかも知れません。

 

新たな答えと新たな視点を手に、振り返ってみれば、

その穏やかな顔に向けたあの言葉は、

意識よりも更に深い部分が、

私に言わせた言葉であったのかも知れないと、そんなふうにも思えました。

 

 

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