あなたへ
そう言えば。
今日の私が思い出していたのは、本を買いに出掛けたあの日のことでした。
あの日の私がショッピングモール内に入っている本屋さんへと出掛けたのは、
近所の本屋さんには、お目当ての本が置いていなかったからでした。
新刊のものであるにも関わらず、書店によって置いていないこともあるのだと、
新たなことをひとつ学んだあの日、
それならどこへ行けば買えるのだろうかとインターネットで検索をして。
ショッピングモール内の本屋さんであれば置いてあることが分かったのでした。
嬉々としながらショッピングモールへ足を運んで、
早速、本屋さんへと入ってみれば、直ぐにお目当ての本が見つかりました。
他の本には目もくれず、レジへと直行した私を驚かせたのは、その在り方でした。
なんと、その書店では、セルフレジだったのです。
私が時々、足を運ぶ本屋さんでは、あなたがよく知る形。
即ち、本を出せば、店員さんがお会計をしてくれるレジです。
本屋さんでのレジというのは、それが当たり前の形であった私にとって、
セルフレジという形での本屋さんにはとても衝撃を受けてしまいました。
スーパーマーケットなんかでは、随時と前から、セルフレジが導入されていましたし、
その景色はあなたと一緒に見ていた景色でもありました。
あの頃から、セルフレジは利用もしていましたが、
本屋さんでのセルフレジという初めて見た形に、
あの日の私は、実は少しだけ、怯んでしまいました。
え?セルフ?セルフなの?
私、ちゃんとお会計出来るのかしらと、
思わず僅かにレジの手前で立ち止まってしまいましたよ。
ですがここは、慣れた顔をしながらお会計をせねばと、
絶対に誰も見ていない筈であるにも関わらず、
変なプライドの元、私は勇気を振り絞って、
ここはセルフレジなんですね?
やり方は分かっていますので大丈夫ですよ風な顔をしながら、
セルフレジへと足を進めたのでした。
落ち着いて、画面に従って、ことを進めれば、
特に何の問題もなく、お会計を済ませることが出来ましたが、
実は、とてもドキドキしていたことを、
あなたにだけは、報告しておこうと思います。
無事に本を買うことが出来た私は、
すっかりと緊張が解けた状態で本屋さんを出ると、
折角、ショッピングモールへ来たのだからと、
雑貨屋さんも少しだけ覗いてみることにしました。
これ可愛い、あれ可愛いと、私的視点の可愛いもの。
そして、これ美味しそう、あれ美味しそうと、
僅かに並ぶお菓子類までを見て回りながら何気なくレジへ目をやると、
そこでもまた、衝撃を受けることになったのです。
あのお店で最後に買い物をしたのがいつの頃であったのか、
定かではありませんが、
あの時は確かに、レジへ行けば、店員さんがお会計をしてくれた筈だったのに、
いつの間にか、セルフレジへと変わっていたのです。
読んでみたい本を買いに出掛けたあの日は、
衝撃ばかりを受けながら、時代の流れを見つめた日でもありました。
スーパーマーケットのレジ。ガソリンスタンド。
あの頃のあなたが知っているセルフ形式と言えば、
この2点が主であったような気がしますが、
きっとこうして、これからも様々な場面で、セルフ形式が増え続けて行くのでしょう。
時代の流れと共に、本当に様々な場面で、この世界の進化を感じます。
新しいことを私に教えてくれるあの子が巣立ち、
時々には笑ってしまう失敗をしながらも、ひとりで此処までを歩んで来た私ですが、
こうして、変わり行く景色に衝撃を受ければ、
5年後10年後の私は大丈夫かしらと、
やはりなんだか心配にもなって来てしまいました。
どんどん便利になるこの世界ではありますが、どんどん歳を重ねる私は、
ひとりで、どこまでこの世界について行けるでしょうか。
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