あなたへ
あぁ、そっか。
そうなのかも知れないね。
ひとつだけを見つけて、
もうひとつを見つけることが出来なかった視点を、
漸く見つけることが出来た私は、
改めて文字を並べて、見つめていました。
ちゃんと成長して、素敵な私になるからね
必ず、今の私が持っていないものを持って、此処に還って来るからね
これは、先日の私の中へと浮かんだ言葉です。
生まれる前の私は、あなたへこんな約束をしたのかも知れないと、
あの日の私は、ただ浮かぶままに文字を綴りました。
姿が見えなくても、必ず側にいるよ
きっとあなたは、私にこんな約束をして、
この世界へと誕生したのだろうと、こんな視点を見つけたのは、
あの子が巣立ち、初めて迎えた夏の頃のことでしたが、
あの手紙を綴った日の私は、
それなら私は、あなたへどんな約束をしたのだろうかと、
知らない記憶を辿ってみても、何も思い浮かばないままに、
きっといつの日か、
答えへと辿り着くことが出来るのだろうと、ずっと先の未来を思い描いたのでした。
先日の私は、不意に、探し続けていた約束へと辿り着き、
漸くセットとなったそれを、ふたつ並べて、交互に見つめたのでした。
姿が見えなくても、必ず側にいるよ
今世において、あなたが選んだ人生を始める前に、
あなたはきっと、私にこんな約束を残して、
この世界へと降り立つ準備を始めたのでしょう。
そうして私は、そこにいるあなたへ、
ちゃんと成長して、素敵な私になるからね
必ず、今の私が持っていないものを持って、
此処に還って来るからねって、
こんな約束をして、先に生まれるあなたを見送ったのでしょう。
4年が経ったら、私もそっちに行くからね
こんなふうに、きっと、希望だけをいっぱいに胸に抱いて。
この世界に生まれ落ちる日を、
この世界で再びあなたと出会う日を楽しみに、
そして、
自分が選んだ人生を歩むことを楽しみにしながら、
あなたをこの世界へと見送ったのでしょう。
あなたと出会い、恋をして。
家族になって、あの子が生まれて。
家族3人という形が、ただただ幸せな形であった筈なのに、
やがて、あの夏がやって来て。
私が歩む人生は、とてつもない痛みを伴う人生であるにも関わらず、
この世界での生を持つ前の私は、
全く別な視点から、これから歩む人生を見つめて、
ワクワクとした気持ちを感じていたのかも知れません。
素敵な約束を交わすのは、肉体を持つ私たちの今度の約束。
そして、
苦しい約束を交わすのは、魂としての私たちの約束なのかも知れないと、
こんな視点を見つけた日がありましたが、
新たな視点から考えてみるとするのなら、
苦しい約束だと感じているのは、此処に生のある私の捉え方なのであって、
生まれる前の私は、この人生の中で伴う痛みさえもを、
全く別な視点から見つめていたのかも知れないと、
こんな視点を持つことが出来ました。
きっと、生まれる前の自分が見つめているのは、
ひとつの人生の中で、どれだけの経験をして、どれだけ成長し、何を得たいのか。
そして、様々な経験を通して、何処へ辿り着きたいのか。
きっと、辿り着いた先にあるのは、
今の私がまだ知らない、何かとても素敵なもので。
それは、この人生を歩んだ私にしか辿り着くことの出来ない素敵な何かであり、
私は、そこへ向かって歩むこの人生を楽しみにしながら、
先にこの世界へと降り立つあなたを見送ったのかも知れません。
だって、そこにいる私はちゃんと知っているもの。
姿が見えなくても、必ず側にいるよって、
あなたがこんな約束をしてくれたことを。
人生という旅路の中では、辛いと感じることもたくさんあれば、
前を向けなくなってしまう時だってあるけれど、
実は、生まれる前の自分から見たそれらの経験もまた、
楽しみの一部であり、
この世界を後にする時には、それらの経験も全て含めて素敵なものへと変わり、
全部、楽しかったと、こんな気持ちで人生を振り返りながら、
この世界を後にするものなのかも知れませんね。
今の私は、この世界に、生のある存在です。
どんなに新たな視点を見つけようとも、
此処から先へと歩んで行けば、やはりきっとこれからも、
知らなかった痛みを見つけては、そこに感じる様々な気持ちと向き合い続け、
それを咀嚼しながら歩んで行くのでしょう。
そこに感じる気持ちは、今の私にとっては決して、
楽しいなどと呼べる感情ではないけれど、
新たに見つけた視点は、
この人生を歩む私を、助けてくれるものとなってくれるのかも知れません。