拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

12時間ずれた世界

あなたへ

 

そこは、水が流れる世界。

坂道が多いその世界では、色々な坂道から水が流れて来るのです。

 

低い場所へはどんどん水が増水して行くけれど、

その世界でのそれは、水害などとは捉えられておらず、

そこにいる皆は、

どこか楽しげな眼差しで流れ来る水を眺めていました。

 

どうやら此処は、水源を探し当てて、

水を止めるというとても大きなアトラクションのような場所であるのだと、

そこにいた私は感じていました。

 

これは、昨夜の私が見た夢の中の話です。

 

どの坂道を登ったら良いと思う?

こんな声に振り向けば、そこに立っていたのは、1人の男性。

 

男性は、その世界に慣れた様子で、

私がどの坂を指すのかを、楽しそうに待っていました。

 

あの坂かな

私が指したのは、一番高いところから続く急な坂です。

 

うん、そうだね

じゃあ、あの坂を登ってみようか

 

こうして私は、この男性と一緒に、

水源を探し当てる冒険へと出掛けることになったのです。

 

流れ来る水の量は、然程多くはありません。

そう。深さにすれば、3cm程でしょうか。

 

水が流れる急な坂道を一気に駆け上がれば、

やがて見えて来たのは、山の上にある町でした。

 

水の流れを把握するために、私たちは建物の屋根へと登り、

行き先に検討をつけると、

今度は、屋根から屋根へと次々に飛び移りました。

 

身のこなしは軽く、なんだか忍者にでもなった気分。

 

次はあの屋根だよ

飛べる?

 

男性は私を誘導しながら、次に飛び移る屋根を教えてくれます。

 

ちょっとだけ遠いけれど、きっと大丈夫。

そこにいる私が自信を持って臨むことが出来たのは、

この身のこなしの軽さは、日々の筋トレの成果であるのだと、

そんなふうに、考えていたからでした。

 

そうして、ちょっとだけ遠い屋根にも、

無事に飛び移ることが出来た私は、

男性と一緒に、更に行く先を確認したのです。

 

それなのにです。

 

16時55分を示す町の時計を見た瞬間に、私は不意に思い出したのです。

17時に行かなければならない場所があることを。

 

ごめん!帰らなくちゃ!

 

私は慌てて、山を降りることにしましたが、なにぶん時間がありません。

17時には間に合わないことを、先方へ伝えなければならないと、

自分の携帯電話を探しましたが、どこにもないではありませんか。

 

それはそのはずです。

だって私は、この世界に入る時に、携帯電話を置いて来てしまったのですから。

 

どうしよう!間に合わないのに、電話も出来ない!

 

こんな私の声に男性は、自分の携帯電話を取り出すと、

連絡先を調べてくれると言ってくれたのですが、

何をどう検索しても、そこに、

私が連絡を取りたい相手先の名前も、連絡先も、

出て来ることがないままに、やがて17時を迎えてしまったのです。

ならば、急いで出発しなければなりません。

 

一緒に冒険してくれた男性は、私を出口まで案内してくれます。

 

こっちだよ

こっち!こっち!

 

男性のお陰で私は、迷うことなく出口へと辿り着くことが出来ましたが、

私がそこで、係員のような方から手渡されたのは、何かの薬でした。

 

これを飲んでから出るのだと、こんな説明を受けた私は、

急いで薬を飲もうとしましたが。

 

ちょっと待って!

 

薬を飲むことを止められたのです。

 

何事かと思えば、

手違いで毒薬を渡してしまったとの説明がされました。

 

係員のような方は、何やら書類を確認している様子でしたが、

私は薬を飲まないままに目が覚めて、

今までの私がいたのは、夢の中だったのだと気が付いたのでした。

 

目が覚めて、時計を確認すれば、5時10分でした。

 

私が目覚ましをセットしたのは、5時丁度の時間でしたが、

目を覚ましたのは、5時10分。

 

あの世界の中にいた私が見た時計は、

実はこの世界の4時55分を指しており、

私は、夢の中で、

この世界と12時間がずれた世界へと遊びに行っていたのかも知れないと、

まだ覚め切らない頭のままで、こんなふうに考えていました。

 

夢の中の私は、16時55分であることに焦っていましたが、

それはきっと、この世界での4時55分であることをきっと感じ取り、

そろそろ起きなければならないと、焦っていたのかも知れません。

 

それなのに、夢の中で、この世界の5時を迎えて。

漸く出口へと辿り着くことが出来た私は、

10分遅れでこの世界へと戻って来たのではないかと、そんな気がしたのです。

 

先日の私は、夢の中という世界は、もしかしたら、

形を持たない様々な世界と繋がっているのかも知れないと、

こんな視点を見つけましたが、

そんな考え方は、強ち間違いではなかったのかも知れませんね。

 

昨夜の私は、もしかしたら、あなたがいる世界とはまた別な、

これまでの私が知らなかった世界へと出掛けていたのかも知れません。

 

さて。ところで、

あの、水が流れる世界の出口で私が飲むはずだった薬とは、

一体、何の薬だったのでしょうか。

 

もしも本来飲むはずだった薬を飲んでいたとしたのなら、

もしかしたら、目が覚めたと同時に、あの世界の記憶が全て、

消えてしまっていたのかも知れません。

 

あちら側の手違いで、薬を飲まずにこの世界へと戻って来たから、

今日の私はこうして、あの世界についての手紙を、

あなたへ綴ることが出来たのかも知れませんね。

 

 

www.emiblog8.com

 

www.emiblog8.com

 

 

1ページ目はこちらより↓↓

拝啓、空の彼方のあなたへ - 拝啓、空の彼方のあなたへ