拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

ライトに照らされて浮かび上がった人の顔

あなたへ

 

すっかりと日が落ちた時間帯。

赤信号を確認してブレーキを踏みながら、

ゆっくりと前を走っていた車の後ろに付けば、

私の車のライトに照らされたのは、この世のものではない人の顔でした。

 

一瞬、驚いた後、思わず笑ってしまったのは、

それが、前の車のリアガラスに貼られたステッカーであると気が付いたからでした。

 

きっとあなたなら、面白がって、貼りたがったんだろうな。

 

どう見ても、この世のものではない、

ちょっとホラーなその顔を見つめながら、

私が思い出していたのは、

車内を色々と飾るのが好きだったあなたのことでした。

 

これ、可愛いでしょう?

俺のと色違いだよ

 

あなたが車内用の可愛い芳香剤をプレゼントしてくれたのは、

私たちが出会ってから、どれくらいが経った頃のことだったでしょうか。

 

あなたのはブルー。

私のはピンク。

色違いで買って来てくれた芳香剤は、

香りが消えてしまっても、ずっと車内に飾っていました。

だって、あなたが買ってくれたものだったから。

 

あれからやがて、私たちは結婚し、家族になって。

 

ステッカーや飾り物。

あなたは相変わらずに、車内に何かを飾ることが好きで、

車向きの何かを見つければ、あなたは必ず私の車の分も買って来て、

私の車にも、お揃いや色違いの飾り物が飾られて行きました。

 

車には、あまり関心のない私は、

車内に何かを飾るということはしません。

 

思えば、あなたを見送り、車を買い替えたことで、

私が乗る車は、随分と殺風景なものとなりました。

 

もしも、此処にあなたがいてくれたのなら、

この車内には、きっと、あなたが選んでくれた色が添えられていたのでしょう。

 

私の車のライトに照らされて浮かび上がったその顔は、

どう見ても、私が苦手とする種類の顔である筈なのに、

私に恐怖心を植え付けるどころか、

私の中へとあの頃のあなたを蘇らせて。

 

私が偶然見つけたあのステッカーは、

その容姿とは裏腹に、実は、優しい何か、だったのかも知れません。

 

もしもあの夏の運命が違っていたのなら、

今頃のあなたは、あの、この世のものではない顔をしたステッカーを、

どこからか見つけて買って来て、

私の車にも、貼ろうとしていたのかも知れませんね。

 

えぇ?なにそれ?なんだか怖いよ

 

きっと私はこんなふうに言うのだろうけれど、

あなたはきっと、私を納得させるかのように言うのよ。

俺のとお揃いだよってさ。

 

 

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