あなたへ
あなたを見送った翌年からの毎年、8月を迎えると、
私の中へと聞こえるようになったのは、カウントダウンでした。
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これは、あの夏にいた私が、
あなたと一緒に過ごすことの出来る日数を表す数字。
1日に一度、カチッという音と共に、数字が減って行くのです。
毎年の8月を迎えると、私の中で自動的に始まってしまうカウントダウンは、
私には、止める術のないものでした。
あの夏の私の瞳に映ったもの。
あの夏にいた私の泣き声。
過呼吸に苦しむ自分の息遣い。
私の中へと設置されてしまったカウンターの音は、
思わず目を背けたくなるような記憶全てを、
何度でも私に体験させました。
それでも私は、平然を装いながら、夏が大好きだと言い続けました。
どんな記憶が蘇ろうとも、私は、
夏を好きであり続けたいとも考えていました。
だって、私の大好きな夏の季節に、あなたと出会えたのだから。
だから私は、勝手に私の中へと設置されてしまったカウンターとの戦いにも、
決して負ける気はしないままに、
実は覚悟を決めて、毎年の8月を迎えたのでした。
あの夏から何年が経とうとも、私はきっと、
8月を迎えれば、勝手に始まってしまうカウントダウンと戦うのだと、
腹を括り直したのは、
あなたを見送ってから、何番目の夏を迎えた頃だっただろう。
それなのに、どんなに耳を澄ましてみても、私の中の何処を探しても、
あの、カウントダウンが聞こえなくなったのは、昨年の夏のことでした。
昨年の夏の私は、不思議なご縁から、
それまでには経験したこともないような時間の流れの中に身を置いていました。
あまりの忙しさに、
あの、なんとも言えない音が掻き消されてしまったのだろうかと、
昨年の私は、実は密かにこんなことを考えていましたが、
実はそうではなかったのだと、そう気が付いたのは、
今年の8月を迎えた日のことでした。
まるで、昨年の私が身を置いたあの環境との出会いが、
カウンターを止める何かしらの鍵を握っていたかのように、
今年の私の中にも、
カウントダウンの音が聞こえることはなかったのです。
思えば、あの、早い流れの中で出会った人たちは、それぞれに、
私に特別な何かを与えてくれた人たちでもありました。
あの環境との出会いの中で、私は、本当に様々に成長することが出来ましたが、
実は、あのカウンターを止めるために出会った場所でもあったのかも知れないと、
今年の私は、そんな気もしています。
偶然が重なって、
何故だか導かれるようにあの環境との出会いがあって。
こうして改めて、あの頃の不思議な流れを思い返せば、やはりあの流れは、
私をあの場所へと運ぶために作られた偶然だったのでしょう。
今日は、8月3日。
改めて自分の中に、あのカウンターを探してみたけれど、
何処にも見つからないままに。
夏が魅せる空を見上げながら、昨年の夏の流れを振り返ってみれば、
あの偶然の流れには、あなたが持つ力がきっと加わっていて、
私がそうとは気付かぬうちに、
私の中のカウンターを、
そっと静かに消し去るためでもあったのかも知れないなって、
今日の私には、そんなふうにも思えました。
夏が大好き。
ただ、そんな気持ちだけをいっぱいに感じながら、
私が元気に8月を歩むことが出来るように、と。
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