例えば、動物へと生まれ変わって、
この世界の様子を客観的に観察しに来ている魂がいたり、
それから、まだ生まれ変わる予定ではなかったけれど、
どうにかしなければいけないという想いから、
急いで支度を整えて、人間として生まれ落ちた魂もいる。
『因みに俺が取り組んでいるのはね、半々物質化出来る薬品の開発。』
「え?半々物質化?」
この世界で生きる私たちは、向こう側の皆から見守られながら、日々を生きている。
例えば、大きく落ち込んだ時も、立ち止まって俯いた時も、
向こう側の皆は、私たちにそっと寄り添ってくれていて、
静かに応援されているのだと言う。
『元気にしている時はね、俺たちは何もしない。ただ見守っているだけ。
でも、落ち込んでいたりする時はね、実は声を掛けているし、抱き締める。
きっと大丈夫って信じてはいるけどさ。
意外と過保護に寄り添っているんだよ。俺たちにとっての大切な存在だから。
大体の人はそれに気付いてないけどね。』
大体の人。私はその中には含まれていないらしい。
思えば私の価値観は、夫が亡くなってから随分と変わった。
人は死んでも、その存在までもが消えてしまうわけではないと、
私が目に見えない世界を信じるようになったのは、夫が亡くなってからのことだった。
それは、そう信じるに値する程の不思議な出来事があったからだった。
夫が亡くなってからの私の身に起こった不思議な出来事には、
夫の力が働いていたけれど、私もまた、夫を何処かに探していたからこそ、
それらを見つけることが出来るようになったのだそうだ。
『信じていてもいなくても、実際には、誰もが見守られているんだよ。
ただ、信じていない人には、見つけることが出来ない。それだけのこと。』
これまでは、それでも特に、何の問題もなかったのだそうだ。
そう。向こう側への異変など、何もなかったから。
『でも、今回の件で、事態が変わったから。』
夫が今、向こう側で取り組んでいるのは、
もう少し強く、この世界に生きている人たちに想いを伝えるためのものだと言う。
夫が亡くなってからの私は、例えば、悲しんでいる時や、辛い時。
そう。それから、さっきみたいに、ひとりで散歩へ出掛けた時に、
温かなものにふわりと包まれるような感覚がある。
それはとても微かなものだけれど、私が感じることが出来ているのもまた、
目には見えないものを信じるようになったからであり、
私だけに特別なことが起こっているわけではない。
実は、誰の身にも、このようなことが起きているのだと言う。
でも、今回の事態から、それをもっとしっかりと感じてもらうために、
人間の半分の半分、
即ち、ちょっとだけ魂を物質化させて、気配濃度を上げた状態を作り、
愛情や応援の気持ちを伝えるというやり方が考え出されたそうだ。
『人ってね、不思議なもので、目に見えないものを信じていない人でも、
温かなものにしっかりと包まれるような感覚を感じた時には、
こっち側から守られているって、ちゃんと感じるものなんだよ。』
実は既に、目には見えないものを絶対に信じない人、1万人に対して、
テストが行われたそうだ。
『そうしたらね、1万人全員に、良い影響が出たの。凄くない?100%だよ。』
テストの対象者は、
その時に、強いマイナスエネルギーを発していた1万人だったと言う。
『テストの直後からね、発してたエネルギーがどんどん変わって行って、
最終的には強いプラスのエネルギーを発するようになったんだ。
それで、絶対にこれで行けるって話になったんだよ。』
でも。それは突然に起きた。
『作業中に事故が起きたんだ。』
物凄い爆音と共に、薬品が吹き飛ばされて、
夫は大量の薬品を浴びることとなり、
半分の半分どころか、しっかりと物質化してしまい、
夫は今、私の目の前にいると言うことらしい。
「そっち側でも、事故とか、そういうの、起こるんだね。」
『いや。通常は起きない。
マイナスのエネルギーが届いていることで、こっち側のバランスが崩れて、
これまで起こらなかったようなことが起き始めているのかも知れない。』
そう言って、夫はとても深刻そうな顔をした。
どうしてあげたら良いのか分からずに、黙って夫の手を握り締めれば、
夫が更に聞かせてくれたのは、この取り組み込められた想いだった。
これらの取り組みは、
今、こちら側で生きている私たちの為にも、
急いで解決しなければならないという想いで進められているのだそうだ。
私たちが人生を全うし、やがて向こう側へと還った時に、
安心して、ゆっくり休むことが出来るようにと。
夫がいる向こう側の皆からのこんな愛が込められた取り組みでもあるのだそうだ。
『毎日、毎日、この世界に命が生まれるように、
毎日、毎日、こっち側に還って来る魂もいるから。』