『それなら、魔法の言葉を教えておくよ。
幸せだなって言いながら生きているとね、
勝手に幸せに生きられるようになるんだよ。
人が話す言葉ってね、実は魔法の呪文と同じなんだよ。』
例えば毎日、ネガティブな言葉を発する人がいるとする。
陰口、愚痴、不平不満、何でも良い。
毎日ネガティブな言葉を発することは、
自分が不幸になる呪文を毎日唱えていることと、実は同じなのだそうだ。
誰かに向けた言葉であったとしても、
それは自分に向けた呪文になってしまうのだそうだ。
時々には、ネガティブに感じるような出来事があるのが人生だけれど、
でも、そんな日常生活の中にだって、
本当は小さな幸せがたくさん詰め込まれている。それが人生でもある。
大切なのは、どこに目を向けて、何を大切に生きるのか、だ。
『何でもいいんだよ。自分が幸せだなって思うものを見つけたら、
声に出して言ってみるの。幸せだなって。』
天気が良くて幸せ、でも良いし、ご飯が美味しくて幸せ、でも良い。
そんなふうに過ごしていれば、どんなに疲れた日でも、立ち止まる必要がなくなる。
だって、幸せだから。
『自分の夢や目標に向かって歩んでいたって疲れてしまう時だってある。
どうしようもなく疲れてしまった日には、疲れた、って俯くんじゃなくて、
自分のキャパを越えるほどに頑張った日なんだなって、自分を褒めれば良いんだよ。
将来、こうなりたいから今日は頑張りすぎちゃった。
私って、とっても頑張って偉かったねって、褒めるの。
でもさ、こんなに頑張ることが出来たのは、健康な体があるからだよね。
幸せだなって。
そんなふうに物事を見ることだって出来るんだよ。』
疲れた、の裏側にだって、幸せはちゃんと隠れている。
幸せに生きる努力も確かに大事だ。
でも、努力をし続けることは、時に疲れることに繋がってしまうこともある。
これは、無理をせず、幸せに生きる方法でもあるのだと夫は言う。
『人生ってさ、凄いと思わない?
ネガティブの裏側にも、幸せが隠れているんだよ。
それってさ、毎日、毎日、宝探しが出来ることと同じだよね。楽しいよね。』
確かに、この世界はいつでも表裏一体だと思う。
ひとつの物事に対して、表を見る人もいれば、裏を見る人もいる。
ほんの少し見方を変えるだけで、
そこに幸せが隠れていることを知れることにも繋がる。
人生って、面白い。
『こんなふうに、プラスのエネルギーを発生させる方法は、幾らでもあるんだよ。
俺は前に、プラスのエネルギーを発生させることは、
どこまでも高く飛ぶようなイメージだと話をしたことがあったけれど、
実は、プラスのエネルギーを発生させることってね、
物事に対する見方が変わることでもあるんだよ。』
マイナスのエネルギーを発している人は、
物事を低い位置からしか見ることができない。
でも、プラスのエネルギーを発している人は、
高い位置から物事を見ることが出来るのだそうだ。
『日々を幸せに生きている人はね、実は高い位置から物事を見ていたりもする。』
例えば、発するエネルギーが違う2人が全く同じ問題にぶつかった時に、
プラスのエネルギーが高い方は、
それを易々と超えて進んで行ってしまうのだと言う。
高い位置を飛ぶことは、少しの壁を障害だとは思わないことにも繋がるのだそうだ。
『俺はさっき、囚われたままでいることは、
幸せではないけれど、楽ではあるという話をしたけれど、
本当に楽なのは、実はプラスのエネルギーを強く発している人とも言えるんだよ。
色々な問題を問題だとすら思わずに、どんどん進むことが出来るからね。』
「じゃぁ、もしかしてゴリラの人って、プラスのエネルギーが高かったってこと?」
これはあの子の声だ。
確かに。彼は、どんどん行動し、前へと歩んで行く生き方だった。
それは、彼にとって、問題だと感じるものがなかったからなのかも知れない。
『そういうことになる。もしも同じ人生を、
彼よりも発生させているエネルギーが低い人が歩んだとしたらどうなるだろう。』
きっと、自分はまだ10代だから、という理由から、
投資をする段階へ進むことが出来ずに、
お金を貯めるところで立ち止まったのかも知れない。
それでも、年齢というハードルを越えれば、
投資をするという挑戦は出来たのだろうが、
彼のように、若くして成功するというところには、
辿り着かなかったのかも知れない。
全ての物事が後ろ倒しになると考えれば、ゴリラの研究者に出会う前に、
ひとつの人生が終わってしまうと考えることも出来る。
どんどん前へと歩むことは、それだけ、
乗り越えなければならない壁に出会ってしまうことでもあるけれど、
ひとつの人生の中で成し遂げることが増えることでもあり、
それは、自身にとっての大きな成長を手に入れることにも繋がるのだろう。
「それなら、出来るだけ、高く飛びながら生きた方が、色々とお得ってこと?」
こんな私の言葉に夫は笑っていたけれど、確かにお得だと言えると頷いた。
精一杯、幸せに生きる努力を重ねて、
どんどん高く飛べるようになった自分をイメージしてみる。
それはとても心地が良くて、きっと毎日がとても楽しいだろう。
これまでの自分にとって、大きな問題だと感じていたことすら、
易々と超えて、どんどん前へと進んで行く。
「え?それって、人生イージーモードじゃないの!」
今の私の課題だと感じていることすら簡単に飛び越えて、
次へ次へと進んでいる私を思い描いてみれば、思わず声が出てしまった。
『そういうこと。まぁ、全ての問題に対して、問題だと感じることがないほどに、
高く飛べるようになったとしたのなら、その人生が最後かも知れないね。
次はもう、この世界に生まれたいとは思わないのかも知れない。』
え?何それ?こんなあの子と私の声に、
夫は、え?当たり前じゃん!なんて言いながら笑っている。
『この世界にいる皆は忘れているだけで、
元々は俺たちが存在するこっち側の存在なんだよ。
だから、人生には終わりがあるの。
だって、本当はこっち側の存在だから。
この世界に生まれることって、永遠にやることではないんだよ。
どんな人生を選んで生まれ落ちても、
易々と全ての問題を乗り越えられるようになったとしたのなら、
それは解けるようになったドリルを永遠に解き続けるようなものだ。
魂はそんなことは望んでいない。
だから、人は現状維持に飽きるように出来ているの。
その必要がなくなってしまったら、生まれないよ。』
そうか。やはり、そうなのか。
人生は修行だと言うのなら、何度も生まれ変わり、修行を重ねながら、
いつかそれぞれの魂はピカピカに磨き上げられて、完成形となる時がきっと来る。
そんな時が訪れたのなら、
私たちは混ざり合って、一緒に、大きな目的へと向かって行くのかも知れない。
いつかの私は、こんなことを考えた日があったけれど、
こんな考え方も、間違いではなかったのかも知れない。
夫は、何かヒントをくれるだろうかと、じっと見つめてみたけれど。
『自分で考えてごらん。色々な人生を歩んで、たくさんの経験をして、学びを得て。
人間として生まれ変わっても、
それ以上に得るものが何もなくなってしまったとしたら、
その先で、どんな存在になりたいのか。』
やはり夫は、これも教えてはくれないらしい。
・・・え?でも、ちょっと待って!
「私たちは、自分の成長のためと、
向こう側を創ることを目的に生まれて来たのよね?」
『そうだよ。』
「やがて皆がこの世界に生まれることを卒業して行ったのなら、
誰が向こう側を創るの?」
『そんな心配は全く必要ないよ。
もしかして、そんなに簡単に卒業出来ると思ってるの?
つい最近、自分が囚われていたことにやっと気付いた人が?』
こんなことを言いながら夫は爆笑しているではないか。
いや。確かに。それはそうだけれど・・・。でも、私だっていつかは・・・。
この人生を最後で良いかなって思えるくらいに成長出来る時が来るかも知れない・・・と、信じたい。
『もしも仮に、皆が凄まじい成長を遂げて、
この世界に生まれる必要がなくなってしまったとしても、
新しい魂は、常に生まれているんだよ。だから、全く心配する必要はないよ。』
先ずは、今、生きているその人生を、精一杯、幸せに生きてごらん。
こんな夫の言葉にあの子はポツリと言った。
「そっか。お父さんは、向こう側の人なんだね。」
そう。今ここに夫の姿が存在しているから、
つい錯覚をしてしまいそうになるけれど、
夫は既に人生を終えて、向こう側へ還った人だ。
俯いたあの子は、
そっか。なんか、お父さん、凄いねと呟いたかと思えば、パッと顔を上げて、
ゴリラの人と同じくらいにお父さんは凄い!と、こんなことを言い出した。
「この中で、お父さんだけが、人生を生き切った。
ひとつの人生を生き切るって、凄いことだよ。」
しんみりとするのかと思えば、あの子は全く別な視点から、
目の前にいる父をリスペクトしているから、なんだか、笑ってしまった。
確かに、夫は、立派に一つの人生を生き切って向こう側へと還った人だ。
そう。それはとても凄いことだ。
そうしてあの子は握り締めた手をマイクに見立てて、夫にインタビューを始めた。
「じゃぁ、向こう側の存在からひとつ、僕たち人間へのアドバイスをお願いします。」
『アドバイス?そうだな。
先が見えないから不安だなんて考え方は捨てた方が良いよ。
全然楽しくないじゃん。もっと楽しんだ方がいい。
その方が幸せに生きられるから。
そして、いつも、どんな時でも、ひとりではないことを忘れないでほしい。
俺たちは、いつだって側にいる。
だから、自分が信じた道を迷わず進んでほしい。
躊躇している暇なんてない。それこそ、時間の無駄だ。』
この世界の人たちが幸せに生きることは、
こっち側の俺たちにとっての最大の喜びです。