あなたへ
外出先からの帰り道、
今朝で丁度コーヒーが切れてしまったことを思い出した私は、
買い物に寄ってから帰ることにしました。
駐車場へと車を停めたところで、
ふと、晩御飯をまだ決めていなかったことに気が付いて。
それなら今日は、ついでに何かを買ってしまおうかと、
こんなことを考えながら、車を降りたのでした。
私にとってのいつも通りの日常の中の一コマを過ごしていた筈だったのに、
その時というのは、いつでも突然にやって来ます。
そっか
あなたはもう、いないんだね
車を降りた瞬間に、不意に聞こえて来たのは、無意識に呟いた自分の声でした。
とても小さな自分の声であったにも関わらず、私の胸の奥は瞬時に反応し、
これまでに何度も感じて来た痛みを私に与えました。
あなたを見送ってからの私は、
何度、不意に訪れるこんな痛みと向き合って来ただろう。
あの夏からどんなに先へと歩んでも、私は相変わらずに、
こうして不意に、
あなたが此処にいないという現実に対して、違和感を覚えるのです。
それでも私は、ひとつも表情を崩すことなく、いつも通りの顔をして、
買い物をし、車へと乗り込むことが出来るようになりました。
私が慣れて行くのは、あなたがいない日々ではなくて、
痛みを感じながらも、
何事もなかったかのように日常生活を歩むことなのかも知れません。
此処が、あなたがいない世界であることが、
酷く不自然に思えてしまう瞬間が訪れれば、
私はきっとこうして何度でも、同じ痛みを集め続けるのだろうけれど、
やがて、同じ痛みがこの胸の中へといっぱいに集まったのなら、
それはいつしか形を変えて、
今の私がまだ知らないものを見せてくれるのかも知れませんね。
そんな瞬間が訪れる日まで私は、この、何度でもやって来る同じ痛みを、
大切に感じ切り続けようと思いました。
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