あなたへ
ねぇ、あなた。
あれは、あなたからの返事だったのでしょうか。
タッチ!イェーイ!!バーリア!
そう言って、とても懐かしいポーズを決めて、
バリアを張ったあなたの姿が不意に浮かんだのは、
昨夜、あなたへの手紙を送り終えてから間も無くのことでした。
あの時の私は、あなたが決めたポーズに爆笑しながら、
それ、女子用のバリアだからね!
男子はこうでしょって、
私が知る男子用のバリアのポーズをあなたに見せたのでした。
えぇ?なにそれ?俺、知らない
え?嘘?知らないの?
あなたが通っていた学校では、男子も女子も同じポーズだったの?
そうだよ
男子のバリアって何?
そう。あの時の私たちは、確かに、こんな会話をしました。
あの時、あなたから何をタッチされたのかは、思い出すことが出来なかったけれど、
きっと子供たちが作り出すようなレベルの、
架空のバイ菌的なにかであったに違いありません。
不意に蘇ったあなたのあの、バリアのポーズに思わず笑った私の中へはやがて、
タッチをし返したいのに、あなたはバリアを張り続けているから、
攻撃することが出来ずに、
なんだか少しだけ悔しかった気持ちまでもが鮮明に蘇りました。
バナナはおやつに入らないからね
不意に蘇ったいつかのあなたの声から、
子供だった頃のことを様々に思い返しながら、
もしも今、あなたと話をすることが出来たのならと思いを馳せて、
文字を綴った昨日の私でしたが、
あなたと過ごした16年間の中に、ひとつ、
今の私への答えとも取れるような記憶が眠っていただなんてね。
あなたと過ごしたあの16年間には、
一体どれだけのものが詰め込まれていたのだろう。
あの日のあなたの突然のバリアは、
実は、あれからずっとずっと先の未来にいる、
昨日の私のために作られた時間であったのかも知れませんね。
私の記憶の奥底へと眠らされていた記憶は、
このタイミングを待っていましたとばかりに目を覚まし、
昨夜の私を、また笑わせてくれました。
昨夜の私は思わず、蘇った記憶の中にいるあなたへ、
それ、女子用のポーズだよ!って、
あの時と全く同じ台詞を呟いてしまいましたが、
昨夜のあなたは何処かで、
えぇ?なにそれ?俺、知らない、なんて、笑っていたのかも知れませんね。
あなたを見送ってからの私には、どれだけの不思議な出来事があっただろう。
この世界から居なくなってしまったあなたを想いながら、
こうして想いを乗せた文字を綴り、
時には不意に、その時に感じた想いを小さく呟く瞬間があるけれど、
私には、こうして時々、あなたと話をしているかのような瞬間が訪れます。
今のあなたはきっと、不思議な力を使うことが出来るのだと、
いつの頃からか、こんなふうに考えるようになった私ですが、
今のあなたは、私の中に眠る記憶を、
自由に呼び起こす力をも持っているのかも知れませんね。
昨夜の私は、記憶の中にいるあなたの姿に笑った後で、
数十年振りに、バリアを張ってみました。
そう。あれです。
人差し指に中指を絡ませるような、あなたも良く知っているバリアのポーズです。
何のためにバリアを張ったのかは、よく分かりませんでしたが、
今朝の私は、とても目覚めが良く、
スッキリとした気持ちで朝を迎えることが出来ました。
昨夜の私が、何となく張ってみたバリアは、
よく眠れるためのバリアだったのかも知れませんね。
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