あなたへ
ここ最近のこちらでは、急に寒さを感じるようになりました。
朝起きて、窓を開ければ、流れ込んで来る冷たい空気に身震いして。
そんな日が続き、先日は遂に、
朝晩の寒さに負けてホットカーペットを出し、すっかり冬の準備を整えました。
丁度、このくらいの時期から、あの子を起こすのが大変になって来たなと、
不意に、朝のあの子との戦いの日々を私に思い出させたのは、
試しにつけてみたホットカーペットの温もりでした。
幼い頃は、寝起きが良かったあの子だった筈なのに、
成長と共に、夜更かしを覚えて。
やがて現れるようになったのは、
眠りを妨げる私を鋭く睨みつけるジョニーでした。
凶暴なジョニーとの長い戦いを経て、
見つけるようになったお兄さんジョニーには、
その成長に愛おしさをも感じたのでした。
武道で鍛えられた腕を振り上げられる可能性も視野に入れ、
警戒体制で挑んだ幾つもの朝は、あの頃の私にとって、常に戦いでした。
あんなに大変な日々であった筈なのに、こうして思い返せば、
ジョニーの鋭い目つきも、寝惚けて腕を振り上げるあの子の姿も、
今の私にとっては、全てが掛け替えのない大切な瞬間であり、
愛おしくも感じられました。
何度、声を掛けても、起きてはくれないあの子の姿に、ため息を吐くのは、
記憶の中にいるあの頃の私。
代わってあげようか?
思わず、記憶の中にいる私へこんな声を掛けながら、
もしも、一度だけ、あの頃の朝にいる私と交代することが出来たのなら、
どんな気持ちを感じることが出来るのだろうかと、思いを巡らせました。
あの頃の私にとってのいつもの日常は、もう、此処にはありません。
どんなに手を伸ばしても、戻ることの出来ない過去というのは、
いつでも愛おしさだけが詰まった時間であったと振り返りながら、
もう一度だけと、思わず手を伸ばしてしまうような気がします。
それは実は、今、此処に流れる時間もまた、
未来の私にとっては、全く同じなのかも知れませんね。
どんな時も、その時が「今」であるうちは、
そこにある何かしらの大変な物事と向き合うのが人生なのだろうけれど、
ずっと同じ景色が存在しないのもまた人生。
此処に流れる時間の中にいる今の私は、
試行錯誤を繰り返しながら日々を歩んでいるけれど、
きっといつかは、此処に流れる時間にも終わりがやって来て、
いつかの未来にいる私は、
今の私がまだ知らない別な景色の中を歩んでいるのでしょう。
此処からずっと先の未来を歩む私はいつの日か、
今、此処に流れる時間を振り返りながら、
目の前にある課題に試行錯誤する私を見つめ、代わってあげようかと、
声を掛ける日がやって来るのかも知れませんね。
朝のあの子との戦いだったあの頃の時間を振り返れば、
あの頃の中にいたあの子は、今の私にひとつ、
新たな視点を見つけさせてくれました。
あの頃は大変だったけれど、楽しかった。
どんな時間も、未来の自分にとっての掛け替えのない時間であり、
思わず記憶の中に手を伸ばしてしまいたくなるような「今」を、
過ごしているものなのかも知れませんね。
1ページ目はこちらより↓↓