拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

お墓の前に佇む人の話

あなたへ

 

夜中にね、お墓の前に人が佇んでいたのよ。

 

突然にこんな誰かの声が聞こえて来たのは、

駐車場に停めた車の中で、ひと休みをしていた時のことでした。

 

とても大きく、そしてはっきりと声が聞こえるけれど、

周りを見渡してみても、声の主は何処にいるのか分からない。

こんな状況の中、誰かの声は、続いて行きました。

 

それでね、こんな夜中に何だろうって思って、

その人がいる方へ行ってみたんだけれど、

そこには誰もいなかったの、と。

 

怖がりなくせに、話の続きが気になって、

思わずその声に耳を傾ければ、更に話は続いて行きました。

 

さっきは絶対に人がいた筈なのに、誰もいないから、

幽霊なのかなって思ったわけ。

で、辺りを探したらね、いたのよ。さっきの人が。

 

話の結末は、どうやら声の主が見たのは、

幽霊ではなく、生きている人だったというものでした。

つまり、その出来事は怖い話ではなかったのです。

 

ただ、どうして夜中のお墓に人がいたのだろうかという疑問だけが残り、

話は、そのように締め括られました。

 

偶然、耳に届いた全く知らない人の話の続きが気になって、

聞き入ってしまうだなんて、

思えば、この人生で初めてのことだったかも知れません。

 

今日ね、お墓に佇む人の話が聞こえて来てね

思わず聞き入っちゃった

 

もしも、あの夏の運命が違っていたのなら、今夜の私はきっと、

あなたへこんな話をしていたのでしょう。

 

あなたと話をすることが出来ない代わりに、

今日の私の中での、ちょっとだけ面白かった出来事として、

こうして文字を綴ってみることにしたわけですが、

改めて思い返してみると、

ところで、声の主こそ、深夜の時間帯に、

お墓で何をしていたのだろうかと、こんな疑問が湧いて来ました。

そして、今日の私は結局、誰の声に耳を傾けていたのでしょうか。

 

夜中にね、お墓の前に人が佇んでいたのよ。

 

その声が聞こえて来たのは、確かにこんな始まりでしたが、

この、非常に続きが気になる話が終わった後で、

急に辺りがシンと静まり返ったのも、思えば印象的でした。

 

あの時の私は、怖くない結末に安堵しただけに過ぎませんでしたが、

こうして改めて思い返せば、なんだか、

腑に落ちないものが纏った時間であったような気もしてしまいます。

 

思えば、今日はハロウィンです。

 

私にとってのハロウィンとは、

あの子にお菓子をあげる日という位置付けとなっていますが、

本来のハロウィンの意味を考えてみれば、

今日は、不思議な出来事が起こっても、きっと不思議ではないのでしょう。

 

これ以上、深く追求することは辞めて、

今日の出来事は、胸の奥の方へ、しまっておきたいと思います。

 

 

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