あなたへ
買い物カゴを持ったまま、私に流れる時間だけが僅かに止まったのは、
先日のことでした。
あの日の私が出掛けたのは、あの頃から存在しているスーパーマーケット。
そう。焼きうどんを作ってあなたに会いに行ったあの頃から。
買い物カゴを持って、
蘇ったばかりの焼きうどんの思い出を反芻しながら店内を歩き出せば、
私の目に飛び込んで来たのは、
若かった頃のあなたにとてもよく似た横顔でした。
思わず息を飲み、立ち止まったままで、その方を凝視すれば、
横顔から髪型に至るまで、全てがあの頃のあなたによく似ていて。
あの時の私は、一瞬、
あの頃にタイムスリップしたのではないかとすら、考えてしまったのでした。
あなたによく似た後ろ姿。
そして、あなたによく似た人。
あなたを見送ってからの私は、何度、こうして、
あなたによく似た人を見つけて来たでしょうか。
きっと私はまた、
あなたによく似た人を見つけたのだと自分に言い聞かせながらも、
再び動き出した時間の中で動揺し過ぎた私は、何故だか、
すぐ側にあったうどんを、カゴの中へと入れたのでした。
冷蔵庫の中にあるうどんを見つめながら、
今日の私は、あの日の出来事を思い出していました。
またうどんを買ってしまったなって、なんだか笑ってしまったけれど、
こんな出来事も、楽しみながら歩んで行けば良い。
折角だから今月は、
焼きうどん祭りの月とでもしておこうかな。
煮込みうどんも好きだけれど、
やっぱり私は、焼きうどんが好きだから。
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