あなたへ
先日みつけた、さくらんぼのキャンディを味わいながら、
やがて小さくなって行ったキャンディを噛めば、不意に蘇ったのは、
あの子の巣立ちの前日の日のことでした。
あの日の私は、あの子が新居に着いたら、直ぐに食べられるようにと、
お弁当を持たせるために材料を買いに出掛けていました。
どんなお弁当を持たせようか。
あの子が好きなものを様々に思い浮かべながら、
次々に、材料をカゴに入れ、私が最後に選んだのは、のど飴でした。
あの頃のあの子は、ほんの少しだけ風邪気味で、
時々、咳をしていて。
あの子が1日も早く、万全な体調に戻りますようにと、
こんな気持ちで、様々なのど飴を見比べながら、
暫くの間、そこへ留まっていたのでした。
のど飴には、様々な種類があるけれど、癖のあるものは、あの子は好みません。
かと言って、同じ味だけのものというのも、きっと飽きてしまうでしょう。
それなら、色々な味が楽しめる方が良いのかも知れない。
あの時間は、この人生の中で、最も真剣に、のど飴を選んだ時間でした。
そうして迎えたあの子の巣立ちの日には、
お弁当を入れた袋の中に、こっそりと、こののど飴を忍ばせたのでした。
まさか、先日みつけたさくらんぼのキャンディが、
記憶と記憶の間に紛れてしまっていた、
僅かだけれど大切な時間を、こんなふうに思い出させてくれるだなんてね。
鮮明に蘇ったあの日の記憶を反芻しながら、
思えば、あの、のど飴を選んだ時間も、
私にとっての、とても大切な時間だったなと、
もう一度、胸の中へと大切に収め直しました。