あなたへ
寝ない!寝ないよ!
そろそろ寝る時間を迎えたのであろう幼い子の、
こんな可愛い声が聞こえて来たのは、
携帯電話に入っているアプリを開いた瞬間のことでした。
そろそろ寝ようか
寝ないよ!
動画を見つめてみれば、こんなやり取りが聞こえて来て。
思わず笑いながらも、私は、画面の向こう側にいる幼い子と、
かつてのあの子の姿を重ね合わせました。
眠そうな目を擦りながら、眠くないと主張していたのは、
あの子が幾つくらいまでのことだっただろう。
お昼寝をさせるのも、夜、寝かしつけることも、一苦労。
眠るのが好きではなかったあの子を寝かせることは、
あの頃の私たちにとって、戦いの時間のようでもありましたね。
私たちにとって、いつの間にか過去のものとなっていたあの頃を見つめながら、
ただ、懐かしさを感じていた筈だったのに、
偶然、見つけた幼い子の主張と、幼かった頃のあの子の主張は、
不意に私に新たな視点を見つけさせてくれました。
幼い子が眠ることを好まないのは、
精一杯、この世界を楽しんでいるからなのかも知れないなって。
よく考えてみれば、起きている間しか、この世界を楽しむことは出来ません。
実は、人は皆、自らが望んで、この世界へと誕生しているとするのなら、
ただ起きて、この世界を見つめてみるだけで、
楽しくて仕方がないものなのかも知れません。
こうして新たな視点から、あの頃のあの子を振り返ってみるのなら、
眠そうな目を擦りながらも、眠ることへ必死に抵抗していたあの姿は、
この世界へと誕生出来た喜びが、
見せてくれていた姿だったのかも知れませんね。
新たな視点をひとつ見つければ、私の中へと蘇ったのは、
幼い頃の自分の記憶でした。
幼かった故に断片的ではありますが、あの頃の私は、
起きている日と名を付けて、お布団の中で、密かに、
夜更かしを試みた幾つもの夜がありました。
結局は、いつも眠ってしまっていたけれど、
夜更かしを試みた夜は、いつでもワクワクとしていたのでした。
だって、あの頃の私は、眠ることが嫌で、
起きていることが、それだけでとても楽しかったから。
いつの頃からか、ひとつ、またひとつと、
幼かった頃の私が大切にしていた物事が、この手の中へと集まるようになりましたが、
今回は、偶然、目に飛び込んで来た幼い子と、
そして、あの頃にいたあの子が、私にひとつ、
大切なものを取り戻させてくれたような気がしています。
目覚まし時計を止めながらも、
なかなか起き出せずにいる幾つもの朝があって、
このまま冬眠してしまいたいなどと考えていた冬もあったけれど、
本当はさ、起きている時間の方が、
ずっと楽しいものなのかも知れませんね。
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