あなたへ
散歩に行きたい。
これは、この数日間の私の願望でした。
正確には、散歩へと出掛けて、冬の光合成を楽しみたいと、
何故だか、こんな気持ちが沸々と湧き上がっていたのは、
ここ最近の私が、少しバタバタとした日々を送っていたからだったのかも知れません。
日に日に強くなる私の光合成願望を叶えるべく、
今日の私は、少しだけ時間を取って、散歩へと出掛けることにしたのですが、
恐らくは、出掛ける時間が少し遅かったのでしょう。
夕方と呼ぶにはまだ早いけれど、落ち始めた日の光は、
今日の分の力は使い果たしたとでも言いた気な顔をしながら、
既に西へと向かい始めていて。
時々、強く吹く風は、
弱くなった日の光を吸収しようとする私の邪魔をするし、
冬の冷たい空気は、私の耳をどんどん冷やして、
耳が取れそうな、あの痛みを私に感じさせるし。
確かに、この冬の私は、冬の季節を好きになりたいと、
こんな気持ちを見つけることが出来たけれど、
今日の私は、冬の光合成の時間を楽しみたかったのです。
袖の中へと指先までもをしっかりと仕舞いながら、
今日は、冬の季節を楽しむ日ではなかったのにと、
胸の内で小さく呟いた私は、
無意識にも、とても早足で歩き続けていましたが、
そんな私の耳に不意に届いたのは、冬の風鈴の音でした。
その澄んだ音は、私に歩く速度を緩めさせると、
僅かに竦めた私の背筋をピンと伸ばさせて、
冬の風を楽しむ私へと変えてくれたのです。
音という世界は、本当に不思議です。
様々な視点を集め行きながら、音にはきっと不思議な力があるのだと、
いつの頃からか、私は、そんなふうにも考えるようになりましたが、
素敵な音というのは、見える景色を、
一気に素敵な景色へと変えてくれる力を持っているのかも知れません。
今日の私は、冬の光合成を楽しむことが出来なかった代わりに、
音が持つ不思議な力を感じることが出来ました。
人生とは、本当にいつでも、
予期せぬ素敵なものが待っていてくれるものですね。
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