あなたへ
お茶を淹れようと、急須とお茶の葉を取り出したところで、
私の中へと蘇ったのは、この帰省中のあの子との一コマでした。
俺、緑茶が飲みたい
はい!どうぞ!
あの日のあの子はこう言って、急須とお茶の葉を取り出すと、
私に差し出してきたのでした。
え?今?今なの?
丁度、お皿を洗おうと思って、腕まくりをしたばかりだったのに、
あの子ったら、どうぞ!どうぞ!って、
私が受け取るまで、急須とお茶の葉を私に差し出して来て。
そんなあの子の姿が可笑しくて、笑いながら、急須とお茶の葉を受け取れば、
何故だか尚更に笑いが込み上げて、
やがてあの子と2人で笑い合ったのでした。
これは、今回のあの子の帰省中に、私が集めた大切な一コマでした。
蘇った記憶を反芻すれば、あの子の姿が、やっぱりなんだか可笑しくて、
思わず笑ってしまいましたが、ふと、思いました。
お茶を淹れることなど、自分で出来る筈なのに、
あの子が自分で淹れようとはしなかったのは、
存分に甘えなさいと、いつかの私が伝えた言葉を、
あの子が大切に持ってくれているからでもあるのかも知れないなって。
相変わらずにあの子は、帰省の度に、大量の洗濯物を持ち帰って来てくれるし、
こうして様々に手を焼かせてくれるから、
あの子が帰省をして来れば、私はいつでも大忙しだけれど、
今の私があの子にしてあげられることは、それだけのこととなりました。
きっといつかは、こんな時間にも終わりがやって来てしまうのだろうと、
いつかの私は、こんな手紙を書きましたが、
この人生の中で、私があの子にしてあげられることは、
あと幾つくらい、残っているのかしらね。
帰省の度に、大きく成長した姿を見せてくれるあの子ですが、
この帰省中には、大人への階段を登り始めたのであろうあの子を見つけました。
きっといつかは、私に甘えてくれることも、
あの子は忘れて行ってしまうのかも知れませんね。
その時がやって来たのならと、思い描いてみれば、
なんだか少しだけ、寂しくもなってしまいますが、
それもまた、あの子の大きな成長。
その時がやって来る日まで、私は、手を焼かせてくれるあの子の姿を、
大切に集めて行きたいなと、改めて思いました。
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